ベルリンがボウイに与えた影響

イギリスやアメリカでは有名すぎて外を出歩くことすらままならなかったが、西ベルリンでは日用品を買いに出かけて騒がれるようなこともなく、ひさびさにリラックスした日々を送ることができた。

ボウイはアメリカに戻るまでの数年間、ベルリンで『ロウ』『ヒーローズ』『ロジャー』という3枚のアルバムを制作する。ブライアン・イーノとともに作られたこれらの作品は「ベルリン三部作」と呼ばれている。

『Low<2017 Remastered Version> / ロウ<2017リマスター>』(2018年2月23日発売、WANER MUSIC JAPAN)のジャケット写真。「ベルリン3部作」と呼ばれる作品の第1弾。ブライアン・イーノとともに冷戦下のベルリンで制作された名盤だ
『Low<2017 Remastered Version> / ロウ<2017リマスター>』(2018年2月23日発売、WANER MUSIC JAPAN)のジャケット写真。「ベルリン3部作」と呼ばれる作品の第1弾。ブライアン・イーノとともに冷戦下のベルリンで制作された名盤だ

そして、この時代における代表曲の1つが『ヒーローズ』だ。

この歌はベルリンの壁沿いにある監視塔の下でデートを重ねる恋人たちを描いたものだが、そのモデルについては諸説ある。

レコーディングしているスタジオの窓から見えた、ベルリンの壁の前でデートをしている男女を見てインスピレーションを得た。

プロデューサーのトニー・ヴィスコンティが恋人と会っているのが窓から見えた。

画家のオットー・ミューラーの作品「庭壁の間で愛し合う二人」にヒントを得た……などだ。

いずれにせよ、ベルリンという場所とその歴史が、デヴィッド・ボウイの創作活動に大きな刺激を与えたことには違いない。

そんなベルリンに、変革の兆しが生まれたのは1985年のことだった。