患者の「歯のメンテナンス」を第一に考えていないセメントリテイン
前項でお伝えしたインプラントに対するヨーロッパとアメリカの違いは、インプラント治療自体にも表れています。
インプラント治療には「スクリューリテイン」と「セメントリテイン」の2種類あります。リテインは「保持する」の意味で、アメリカはセメントリテイン、ヨーロッパはスクリューリテインが主流です。
両者の違いは、人工歯を土台にどうくっつけるかです。セメントリテインは、文字どおりセメントでつなげます。スクリューリテインはスクリュー、つまりネジで取りつけます。
便利なのは、スクリューリテインのほうです。ネジで取りつけているので、いつでも人工歯を取り外せます。人工歯を外して定期的にメンテナンスできます。
一方、セメントリテインは、セメントでくっつけているので取り外しがしにくいためメンテナンスが難しいという欠点があります。そしてセメントリテインは、取りつける際にセメントが人工歯の周囲に残りやすい問題もあります。このセメントが、インプラント周囲炎を起こす原因にもなります。
そんなセメントリテインがアメリカではなぜ主流かというと、見た目はこちらのほうがいいからです。スクリューリテインの場合、人工歯にネジを取りつけるための穴をあけます。これが見た目に格好悪いことから、アメリカではセメントリテインが好まれるのです。
日本のインプラント治療ではどちらも選べますが、アメリカ式を好む歯医者が多いのが現状です。「こちらのほうが見た目がいいですよ」と説明されれば、患者さんも「ではセメントリテインで」となるでしょう。
とはいえインプラント周囲炎になるリスクを考えれば、スクリューリテインのほうが安心です。
すでに述べたように歯について考えるとき、あるべき優先順位は一番が「歯の病気を治す」、二番目が「歯の機能障害の改善」、そして最後が「審美」です。セメントリテインが優先しているのは「審美」です。
スクリューリテインが優先しているのは一番の「歯の病気」です。歯のトラブルへの対応のしやすさから、優先順位を考えるなら、スクリューリテインのほうが望ましいように思います(ただし、条件によってスクリューリテインができない場合もあります)。