社会人の彼
高校2年生の夏。友だちと海に遊びにいったところ、男性グループに声をかけられる。
それをきっかけに何度か一緒に遊ぶようになると、友だちからのプッシュもあり、そのうちの1人と交際が始まった。ひと回り以上も年上の、現場系の仕事をする男性だった。
交際をきっかけにだんだん彼氏の家に入り浸るようになると、しつこく母親は「別れなさい」と言ってきたが、やはり1年ほどすると根負けしたようだ。
蒼山さんにとって、社会人の彼氏ができたことは悪いことばかりではなかった。
彼氏や彼氏の友人たちと関わるようになって、人との距離感を学び、自分の居場所ができたようで安心し、笑顔を取り戻すことができたのだ。
高校を卒業した蒼山さんは、県外の福祉系の会社に就職。家を出た後、蒼山さんは実家に帰らないばかりか、連絡もしなくなった。
彼氏とは会う頻度が減り、最終的には彼氏の浮気が発覚して別れた。
白紙に戻った結婚
蒼山さんは20代半ばの頃、冬に友だちとスノーボードをしに雪山に行ったときに、上級者コースでガンガン技を決めている男性に遭遇。一目惚れした蒼山さんは、自ら食事に誘い、交際まで漕ぎ着けた。
約半年後に妊娠が発覚すると、彼氏は「結婚しよう」と言った。
しかし彼氏が蒼山さんの両親に結婚の挨拶をしに行く前日、蒼山さんは流産してしまう。それでも彼氏は「結婚しよう」と言ってくれたため、そのまま蒼山さんの実家を訪れることに。
ところが、母親は彼氏に言った。
「宗教をしなさい。流産したのは信心をしていないからだ」
「私も彼も、『この人は、人としてないな』と思いドン引き。彼はあまりの衝撃に『結婚を白紙にする』と言い出し、私はショックのあまり家を出てしまいました……」
蒼山さんは、しばらく1人でホテルにひきこもっていた。
その間に父親や祖母が母親を説得し、しぶしぶ母親は蒼山さんと彼氏が宗教に入らないことを聞き入れた。
一方、彼氏やその両親は、「母親と結婚するわけではないんだから、本人が宗教をする気がないなら結婚しても大丈夫」と思い直してくれた。
無事結婚した蒼山さんは、すぐに再び妊娠し、翌年に25歳で第一子を出産した。
成人してからもなお、暗い影を落とす母親の存在。
しかし、蒼山さんの“人生の壁”は母親だけではなかった……。
〈後編へつづく:『「家事も育児も1人でやれ!」モラハラ夫と3度の離婚危機にあった30代女性』〉
取材・文/旦木瑞穂