「持てる者」が「持たざる者」の購入チャンスを奪い取る
――裏を返せば、日本人の転売ヤーは、普段から仕入れが容易ということでしょうか。
そうです。日本では人気商品はいつだって定価が当り前ですから。国内での転売では、購入制限がかかった品薄の最新ゲーム機を普通に家電量販店で買い、フリマアプリに出品して数万円を儲けた例をよく聞きます。
ちなみに取材した転売ヤーには、クリスマスに売り切れるであろう玩具を、商戦前に定価で購入し、合計20点の商品を売って、20万円以上を売り上げた者もいました。
また、百貨店の外商顧客になって、高騰の約束されたジャパニーズウイスキーやロレックスを定価で入手し、買取店で転売する方法もあるようです。
これでは一般消費者は高額な料金を支払わなければなりません。メーカー、消費者、社会が連携して対策を講じる必要があります。
――中には、犯罪がベースの転売もあると聞きますが……。
転売が犯罪の温床になるのは、購入経路に問題がある場合です。電子マネーアカウントの乗っ取りやクレジットカードのスキミングで、電子タバコや新幹線チケットを購入し、転売します。どちらも継続的に購入する固定客を確保できるので、犯罪者にとっては都合のいい商材です。
――取材が1冊の書籍になったわけですが、社会になにを伝えたいですか?
今の転売市場は、簡単にいうと「持てる者」が「持たざる者」の購入チャンスを奪い取るような状況に陥っています。「商品への愛」よりも「いくら払えるか」で購入の可否が決まる状態は、市場の摂理といえばそれまでです。
しかし、個人間で商品と代金を取引するデジタルサービスを背景に“現代のヤミ市”が興隆するなか、これまで当たり前に手に入れることができたモノが手に入らなくなり、悲しい思いをする人がいることは確かです。そんな転売問題にどう対処していくのか。果たして悪いのは転売ヤーだけなのか。社会全体で考えていく必要があります。
取材・文/宿無の翁 写真/わけとく