日常生活に溶け込み切れない日本のフードデリバリー

Uber Technologiesと出前館の業績の違いは、アメリカと日本でのフードデリバリーの利用状況の差によるものが大きい。

アメリカでは2018年の段階で、フードデリバリーは340億ドル(当時のレートで3.6兆円)もの市場を形成していた。

シェアトップのDoorDashがソフトバンク・ビジョン・ファンドなどから5.3億ドルもの資金を調達したのが2018年3月だ。アメリカのマクドナルドがUberEatsと提携して配達を強化したのが2017年である。

アメリカでは仕事や家事に追われて時短を目的としたフードデリバリー需要が強く、市場の大幅な伸長が見込まれていた。消費者の止むに止まれぬ利用動向があったわけだ。

米国のフードデリバリー市場でダントツのシェア率を誇る「DoorDash」 写真/Shutterstock
米国のフードデリバリー市場でダントツのシェア率を誇る「DoorDash」 写真/Shutterstock

一方、日本では事情がやや異なる。

食に関連する情報提供を行う「食の窓口」のフードデリバリーに関する消費者調査(「食の窓口が「出前・デリバリーサービスに関するアンケート調査」を実施」)によると、利用する理由のトップは「料理をするのが面倒な時」で38.6%。「特定の料理が食べたい時」が32.0%と続く。「忙しくて料理をする時間がない時」は24.9%と低い。

マーケティング・リサーチ会社のクロス・マーケティングが実施した調査(「宅配に関する調査(2022年)フードデリバリー編」)では、デリバリーで注文した料理のトップはピザで57%を獲得している。2位のお弁当は29%。3位の寿司が27%だ。

ピザは子供を持つ家庭から友人同士のパーティー、一人暮らしの学生や社会人まで、利用シーンの幅広さが特徴だ。「料理をするのが面倒」という消費者のニーズを満たすのにぴったりの料理だと言える。

しかも日本にはピザを手作りするという習慣がないため、「特定の料理が食べたい」という利用動向にも当てはまりやすい。

ただし、宅配ピザの平均単価はMサイズで2500円ほど。高額なために利用頻度は決して高くはない。高額なのは3位の寿司も同じである。

つまり、日常的にフードデリバリーを利用するという意識が低いのだ。 

写真/Shutterstock
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アメリカもピザの宅配は人気があるが、ハンバーガーやタコスなど日常食での利用が中心だ。

Uber Eatsで最も注文が多い商品は、フライドポテト、ガーリックナン、パッタイ(タイ風焼きそば)など、軽食が多い(「The 2023 Uber Eats Cravings Report」)。

つまり、アメリカはフードデリバリーが日常に溶け込んでいるために市場拡大が望めるが、日本はコロナ禍という外出制限がなされた異常事態で市場が一時的に伸びただけであり、経済活動の再開とともに市場は縮小へと向かうのではないかと予想できるのだ。

その様子は、インターネット上での検索需要を調査するGoogleトレンドにも見てとれる。