「詐欺のお金とは知らずとはいえ、お金つかっちゃってるから」
スーツを返さないとはなんともセコい話だが、男性住民が続ける。
「舟一の母親は村の病院の院長のお嬢さんで、父親の兄弟は市議だしな。こんな小さな村だから名士として、知られた人たちだったんだわ。舟一の息子が学校で何かやらかしたときも、舟一の父親は『この子がやってないって言ってるんだろ。だったらやってないんだろ』って言い張ってたよ。
村の人たちも事件のことは知ってるんだけど、当人たちには言わないよ。何か言ったらワーワーとうるさい人だから」
さらに、この男性は江尻容疑者から実家への仕送りの噂も聞いていたようだ。
「おそらく江尻家は取材は受けないだろう。なんせ自分たちも詐欺のお金とは知らなかったとはいえ、お金つかっちゃってるから。
10月にな、父親は親戚の人らに『息子が金出してくれるって言うからエノキ小屋壊すんだ』って言ってたんだよ。あれを壊すとなると数百万はかかるだろうし。でも江尻家はそれが詐欺で盗ったお金だとは本当に知らなかったと思う。
ニュースが流れた後、舟一の母親は『こんなことになるなんて』って泣いていたらしいから」
江尻容疑者の両親や、親戚の元市議はいま何を思うのか。記者が江尻容疑者の実家を訪ねると、父親がいた。集英社オンラインの記者だと名乗ると「はい、こんにちは。ええ」と返すも、江尻容疑者のことや被害女性について尋ねると「勘弁してくんねえかな」「俺なんにもわからねえほんと」と話した。
また、江尻容疑者の父親の兄弟である元市議会議員にも話を聞いたが、事件のことは「(事務所の)テレビで見た」と言いながらも「(父親と)兄弟だけど知らねえわ」と一蹴。「人騙す努力だってしたんだから褒めてやってくれや。ふっふっふっ」と、被害女性の気持ちを逆撫でするような言葉さえ投げつけてきた。
結婚を約束したと思った男性に数千万円もの財産を詐取され、「この先、どう生きたらいいのか」と絶望しながらも生きていかなければいけない女性が、少なくとも15人はいる。
そんな女性たちに対して、彼らは何を思うのか。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班