治療はマウスピースとCPAP

「睡眠時無呼吸症候群はなかなか自分では気づかず、パートナーから『いびきがひどい』、『眠っているときに呼吸していない』と指摘されて受診される方がほとんどです。以下のような症状があれば受診していただきたいです」

・いびきがひどいと言われる
・夜間に息苦しさを感じて目が覚める
・起床時に頭痛がする
・日中眠気や倦怠感がある
・寝たはずなのに疲れがとれない

また、最近はさまざまなデバイスで睡眠中のいびきがわかるものがあるので、そういったものを利用して、自分の状態を早めにチェックすることも肝心だと楠氏は指摘する。

では、この病気になった場合、どんな検査や治療法があるのだろうか。

「クリニックでは、まず簡易検査を行います。酸素の値や心拍数を調べる機械を持って帰り、自宅で着けて寝てもらいます」

簡易検査の結果、無呼吸が疑われる場合は、精密検査を行う。脳波まで調べることで呼吸の状態や睡眠の深さなどを調べ、重症度を判断する。

「治療は軽症の場合はマウスピース、重症ならCPAPを使います。マウスピースは歯の噛み合わせを下の歯を前に出すように調整することで、喉の奥が開き、無呼吸の状態を減らします。

軽症だと充分効くのですが、重症だと効果が足りないので、重症度の場合CPAPの治療を行います」

CPAPは、15㎝から20㎝角くらいの立方体の中に、すっぽり収まるくらいのサイズの装置本体と空気を送り続ける専用のチューブ、鼻にあてるマスクを接続して使用する。空気の圧で気道を広げ、睡眠中の無呼吸を防止する装置だ。

CPAPの装置 写真/Shutterstock
CPAPの装置 写真/Shutterstock

「CPAPは高血圧や糖尿病の薬と一緒で続けることが大切です。副作用や合併症がほとんどなく効果も証明されています。

慣れるのに2~3ヶ月かかる方が多いので、患者さんには自転車を初めて乗ったときと似ていると説明しています。はじめて自転車に乗ると安定せず、転倒することもありますが、慣れると軽快に乗りこなせて移動に便利ですよね。

CPAPも同様に始めは抵抗があるかもしれませんが、使用することで、睡眠をしっかりとることができ、いびきの改善や日中のパフォーマンス向上につながります」

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治療すれば、パフォーマンスの向上、疾患の予防、家族関係の改善などにもつながるので睡眠中のいびきや日中の眠気が気になる人は、専門の医療機関を受診したほうがよいだろう。

プロフィール
楠 裕司(くすのき・ゆうじ)
渋谷睡眠・呼吸メディカルクリニック院長。山梨医科大学卒業後、日本医科大学呼吸器内科入局。日本医科大学の睡眠時無呼吸症診療をトップとしてけん引後、「専門性の高い治療をもっと便利に身近に受けて欲しい」との思いで2022年渋谷睡眠・呼吸メディカルクリニックを開院。日本睡眠学会専門医として年間1000人以上の睡眠に悩む方を診察している。「睡眠を良くして生活を充実させ、ハッピーな人生を送って欲しい」という想いで日々取り組んでおり、SNSでも睡眠を良くする情報を発信中。

取材・文/百田なつき  サムネイル/Shutterstock