弱者男性を救いたいと思う者がいない
弱者男性は、救済されにくい。これについては、実際に弱者男性として長年苦労している、虐待・いじめ・性暴力のサバイバーである澤一輝さん(仮名)から話を伺った。
「実は僕には、過去に性被害経験があります。そのため、僕と同じように悩んでいる人、その人たちを支援する団体や個人と接点を持つことが多いんです。でも、そこですら、自分の苦しみを理解してもらえないと感じます。たとえば性被害のトラウマを抱えながらもパートナーがほしいと話すと、『モテないなんて決めつけなくていいよ。彼女ができるチャンス、いくらでもあるんじゃない?』とあっさり言われてしまう。相手には悪気がないからこそ、傷ついてしまうんです。
女性の性暴力サバイバーには、恋愛経験のある人が多いと思います。だからパートナーがいない苦しみを、なかなかわかってもらえない。他のコミュニティ、たとえば、貧困に理解がある、LGBTQ+に理解がある、性暴力に理解がある、ポリアモリーに理解があるグループでも、経済的弱者、サバイバーである自分にパートナーができない苦しみはわかってもらえない。僕は本当に深く悩んでいるのに、さらっと『努力不足』と言われてしまうんです」
─いわゆる弱者男性の味方である立ち位置から、女性叩きなどを行うインフルエンサーを味方に感じますか。
「弱者男性インフルエンサーは、弱者男性の味方ではありません。商売でやっているんだなと感じます。もともとは味方だったのかもしれませんけれど、儲かった結果、『売れ続けるために』狙ってやっているのではないか、あえて男女対立を煽っているのではないかと感じます。かれらは弱者男性の敵ではないが、味方でもないんです。
たとえば男性を差別する女性がいることは事実であったとしても、女性全員が悪いわけではないですよね。理不尽な女性もいるし、一方で味方になってくれる女性もいる。ただそれだけです。
相手がインフルエンサーとなると、講演を開いたり本を出版したりするようなビジネスチャンスになってしまい、信頼できないと感じてしまいます。本当にそう思っているのだろうか?自分を騙しているのではないだろうか?『こうすれば盛り上がるぞ』と思ってやっていないだろうか?と。
同じような理由から、フェミニストの方々も弱者男性の味方ではないと感じますね。『フェミニズム』自体が商売になっている人が少なからずいると思っています。また、フェミニストの一部の方々は『キモい』と男性を叩くこともあるんです。やっぱり、悲しいなと思ってしまいますね。だからか、フェミニストを味方だと感じることができないんです。
こういったいろいろな状況を踏まえると、信頼できる人が数少なくて。自分のことを本当に理解してもらえることはないと感じてしまっています。これまで約20年、弱者男性である自分の生き方や生きづらさを考えてきましたが、やっぱり寄り添ってもらえることが少ない。男性・女性、両方から自分の生きづらさをわかってもらえない。だから、結局は自分で頑張るしかないなと思っています」