「SMじゃなくて、ドミナント/サブミッシブの関係なんです」
東京藝術大学を卒業し、昼は現役オペラ歌手として音楽教室を営み、夜はSMクラブで女王様として働く「さだにゃん」(30代前半)。彼女と養子縁組をしているパートナーの「みーちゃん」(30代後半)は、防衛大学校を卒業した元自衛隊員で、現在は会社員として働いている。
––––さだにゃんさんとみーちゃんさんは、いつSMに目覚めたんですか?
さだにゃん 幼稚園の年長か小1くらいのときにアニメ「美少女戦士セーラームーン」を録画したくて、父の書斎にあったビデオをデッキに入れたら、レズビアンのSMモノのアダルトビデオが自動で再生されたんです。
内容は、美しい女性2人がボンデージ(エナメル風のコスチューム)を着てイチャイチャしているシーンから始まって、そのあと男の人が女性たちにいじめられる、っていうものでした。
私はそのビデオを観た瞬間、「すごく美しいな」と思ったんですよ。それ以降、大好きになって、その日からセーラームーンそっちのけで、親の目を盗んで何度も観ていました。
みーちゃん 私はそもそもSMに目覚めてないと思います(笑)。さだにゃんが主催するSMイベントをスタッフとして手伝うことがあるんですけど、「あまり理解できない世界だな」と思いながら見ています。
さだにゃん 「SM」と「ドミナント(支配する側)/サブミッシブ(支配される側)」って別物なんですよ。みーちゃんと私は、ドミナント/サブミッシブの主従関係であって、そこまでSMの関係ではない。だから、毎日みーちゃんをムチで打つとかはしていないです。ときどき噛みついたりとか、少し首を絞めたりとか、ちょっと拘束したりとか、すれ違うときにお尻を叩くくらいはするけど(笑)。
みーちゃん 私は痛いのが嫌いなんです(笑)。
––––2人はどんな幼少期・学生時代を過ごされたんですか?
みーちゃん 私はXジェンダーなので、物心ついたときから「性別」という概念がないんです。幼稚園で男女別に並ばされるときも、自分が男の子か女の子か、どっちかわからなくて。でも、いつも女の子のほうに並ばされるから、「自分は女の子なのかなぁ」と思っていました。
初恋は小4のときで、相手は女の子でしたね。好きになる相手の性別については何も考えていませんし、女性を好きになることに対して葛藤とかもなかったです。
さだにゃん 私は、母が実家で音楽教室をしていたので、ずっと家で音が鳴っている環境で育ちました。小2のクリスマスに父からバイオリンをプレゼントしてもらってからは、バイオリンを弾いていた記憶しかないです。
ご飯を食べる時間とお風呂に入る時間以外はずっと練習していましたね。初恋は、幼馴染の男の子でした。
––––ということは、さだにゃんさんはもともと男性が恋愛対象だったんですか?
さだにゃん いえ、私はみーちゃんと出会うまでは女性とお付き合いしたことがなかったんですけど、もともと女性も好きでした。もし、学生時代に可愛い女の子に告白されていたら、何も考えずに付き合っていたと思います。
私はポリアモリー(複数の人と同時に付き合う恋愛スタイル)なので、現在もみーちゃん以外の男性とも主従関係を持っているんです。
––––それに対して、みーちゃんさんは嫉妬しないんですか?
みーちゃん いえ、むしろ痛いことは他の人にやってくださいって思っています(笑)。