おかしな裁判結果
──新刊『日航123便墜落事件 隠された遺体』(河出書房新社)では、不可解な裁判結果に触れているそうですが……。
まず、裁判(遺族の吉備素子さんが日本航空にボイスレコーダーの全開示を求めた訴訟)の結果を皆さんに報告するために、と判決文を入れています。2021年に吉備さんが起こした東京地裁での裁判では、原告側が提出した証拠証明書は膨大な量でしたが、JAL側は新聞記事2枚のみ。そういったこともあってJAL側に対する裁判長の心証は悪く、こちらに有利に働くかなと思っていたんですが、なぜか突然裁判長が判決直前に交代。結局、棄却されています。
吉備さんは最愛の夫・雅男さん(享年45)を事故で失っています。遺体はバラバラになって、手と足とお腹の皮膚の一部しか見つかっていません。なぜ雅男さんが死ななければならなかったのか? 事故原因を知りたいと思うのは当然です。それなのに事件を起こしたJALはボイスレコーダーを開示しません。ボイスレコーダーは、航空会社でなく米国では国家運輸安全委員会、日本では運輸安全委員会が保管して、時期が来たら必ず開示する。これは世界において当然のルールです。
──最後に、ここまでの熱量で青山さんが調査、研究、執筆をする原動力はなんですか?
長い人生において、老いれば経験則ばかりで話をしがちですし、若者はネット上の浅く狭い範囲しか物事を知らないかもしれません。しかし調べれば調べるほど、知らなかった真実が浮かび上がってきます。実際、先日も墜落直後から遺体検視所で働いていた看護師さんからご連絡をいただき、驚くべき新事実を教えていただきました。(詳細は新刊『日航123便墜落事件 隠された遺体』にて)わたしはこの日航123便事件への調査を通じて、物事を多重的、多層的に考えていくことを世の中に伝えたい、そう思って執筆を続けています。常に独立した精神をもつ研究者でありたいと心掛けているのです。
取材・文/集英社オンライン編集部