弁護士意見の開示は知事と側近を追い込みたい勢力の仕業か

一方、弁護士意見にある「マスコミは仕事柄知ってしまった以上書かざるを得ない」との記述も荒唐無稽だとの指摘が出ている。雑誌記者は「メディアに情報を寄せても裏付けが取れなければ記事にはなりません。タレコミがすぐ記事になるというのは妄想ですね」とあきれる。

告発を「居酒屋の噂話」と一方的に断定した上、メディアへの情報提供についての理解も足りない弁護士意見は、開示された文書の中で処分が妥当だと主張している唯一の部分だ。

この記述によって処分に必要な客観的な意見を得たように装った県はAさんの処分を決行したが、公益通報者保護法が当時どう扱われていたのかが開示であらわになった。

Aさんをなぜ当初から公益通報者として扱わなかったのか、は重大な焦点に浮上している。

斎藤知事は7月24日の会見で、「(Aさんが4月4日に手続きを取った)公益通報の前に今回の文書が配布されました。内容が真実ではない。核心的なところに虚偽の内容が入っていた。人事課もそこは問題だということで、懲戒処分の対象になるということで調査を進めたということです」と主張し処分手続きを中断しなかったことを正当化。

その根拠に「当時の弁護士さんも、後から公益通報の手続きをとってもそれ以前に配布したことが保護される対象にはならないと発言をされています」と述べ、藤原弁護士がこの主張の根拠を与えたことも隠さなかった。

しかし、7月30日の記者会見では一転し、県の対応は「時系列を整理した上で説明したい」と説明を拒むようになった。

県関係者は「対応がまずかったため余計なことを言うなと誰かからアドバイスを受け、知事は態度を変えた印象を受けます」と話す。

7月30日の記者会見で話す斎藤知事(兵庫県運用チャンネルより)
7月30日の記者会見で話す斎藤知事(兵庫県運用チャンネルより)
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口を閉ざしはじめた斎藤知事には、多くの問題をはらむとみられる弁護士意見の開示は痛手になると考えられる。

これが黒塗りにされず表に出たのは、当時の処分が不当であることを明らかにして、斎藤知事や4人組を窮地に追い込みたい県庁内勢力の思惑があるのではないか、との見方まで出ている。

8月2日の百条委は、8月30日に斎藤知事に対して証人尋問を行うことも決めた。調べの対象になった知事と一斉に姿を消した側近たち。兵庫県庁の混迷は深まっている。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班