告発を「居酒屋で聞いた噂話」と断じた弁護士を直撃 

今回、兵庫県明石市の辻本達也市議が県に公文書公開請求を行い開示された「決裁書・報告書」を入手。その中に、県がAさんを公益通報者保護法上の保護対象として扱う必要がないと判断した根拠とみられる「弁護士意見」が書かれていた。

そこには「誹謗中傷文書を作成・配布する行為」との小見出しがあり、告発を「誹謗中傷」と規定。さらに以下のように書かれている。

「作成した文書を10人に配って、その中にマスコミ関係者がいたということは、報道してほしいという意図しか考えられない。マスコミは仕事柄知ってしまった以上書かざるを得ないから広がることを期待していたと評価されても仕方なく、流布したという認定は可能。

居酒屋などで聞いた単なる噂話を信じて作成した文書は、その内容が真実であると信じるにつき相当な理由にはならず、告発者の利益を守る対象ではない」

辻本達也・明石市議が兵庫県から開示を受けた、Aさん処分に至る決裁文書(撮影/集英社オンライン)
辻本達也・明石市議が兵庫県から開示を受けた、Aさん処分に至る決裁文書(撮影/集英社オンライン)

公益通報者保護法はメディアへの情報提供も公益通報とみなし、通報者の詮索や、通報者に不利益を与えることを禁じている。Aさんは文書を発送したときから保護対象になるとの見方が強いが、弁護士意見は真っ向からこれを否定している。

辻本市議もこの点に注目し、「法律の専門家が“居酒屋”という表現も使って告発内容を一刀両断しており、驚きました。県にもAさんを公益通報者とする観点が見当たらない」と話す。

県人事課は、この弁護士が5月7日の処分発表の記者会見に「兵庫県特別弁護士」の肩書で同席した藤原正広氏だと認めた。そこで藤原氏に2度にわたって電話で尋ねた。

――文書に書かれたことを話した記憶はありますか?

「何とも申し上げようがないですね」

―-決済文書に「弁護士意見」と書かれています。

「『真実であると信じる相当な理由があるか』というところは当然問題になっていたところではあるんだと思います」

――告発文書には真実であると信じる相当な理由はないという判断をしたのですか?

「多分そう…、正確にはどう言ったかというのは覚えていない。多分そういう方向での話にはなってたとは思いますが」

――「居酒屋で聞いた話」という言葉は、Aさんがそう言ったのですか?

「事情聴取の発言内容は今のところオープンにはできないということなんで、コメントはできないです」

――Aさんは公益通報者保護法の保護対象ではないかという検討は、調査でなされましたか?

「私としては見解は示している」

――その結果が記載内容ですか?

「いや、それがどういう受け止め方をされたかは存じ上げない」

――県に示した見解というのは、Aさんを保護の対象とすべきとの考えですか?

「内容についてはちょっと申し上げられない」

処分の決裁文書にある「弁護士意見」(撮影/集英社オンライン)
処分の決裁文書にある「弁護士意見」(撮影/集英社オンライン)

弁護士意見の核心は、告発文書には「真実であると信じるにつき相当な理由がない」と断定し「告発者の利益を守る対象ではない」と言い切っていることだ。この文言について、県人事課担当者は、公益通報者保護法を検討した末の藤原弁護士の判断だと説明した。

――弁護士の発言の主旨を県が変えたことはないですか?

「(「弁護士意見」の記載は)一言一句そのままではないですけど、こちらで先生(藤原弁護士)からうかがったお話をまとめて記載しているということです」

――「告発者の利益を守る対象ではない」という文言があります。これは公益通報者保護法を検討した結果、こういった意見が出たのですか?

「はい。そうですね」

――公益通報者保護法の対象に(Aさんが)なるかもしれないという検討はしましたか?

「そうですね」

――弁護士はこのような意見を出し、結果あのような処分になったと?

「そうですね」