「民主主義」の看板もトランプ陣営に大きく傾く?
一方のバイデン氏は銃撃を受けて緊急記者会見を開き、トランプ氏の無事に安堵するコメントとともに「こんなことを許してはいけない」「政治的暴力は絶対に許されない」などと強く非難する声明を出したが、銃撃事件がトランプ陣営有利に働くことは否めないという。
「バイデン陣営は、2020年大統領選の敗北を認めず、議事堂襲撃事件への道を作ったとしてトランプ氏を『民主主義への脅威』と批判してきました。
しかし、今後のトランプ陣営は、暴力に屈せず選挙戦を続けるトランプ氏の姿勢こそが『民主主義』であるとの宣伝を強めるでしょう。それがトランプ氏をさらに押し上げる効果を果たすのではないでしょうか」(三牧氏)
バイデン政権はこれまでも「民主主義」を重ねて強調してきたが、むしろ状況は不透明化する一方だ。
「犯人の動機解明はこれからだが、SNSでは人物像や動機をめぐる根拠のない議論や陰謀論が、トランプ氏・バイデン氏両支持層の間で拡散されています。
権威主義が広がる世界で、バイデン政権はアメリカを民主主義の牙城と位置付け、民主主義国の結束を呼びかけてきましたが、当のアメリカが今、民主主義の魅力を世界に示せていません。それどころか、民主主義の未来は極めて不透明な状況となっています」(三牧氏)
国家の元首脳が公然と銃撃される事件といえば、日本人ならば2年前の安倍晋三元首相銃撃事件を想起することだろう。
銃撃したと見られる人物はその場で射殺されたことが伝えられており、本人から動機や背景などを直接聞き出すことはできない。陰謀論や真偽不明な情報も飛び交っているが、全容の解明には時間がかかりそうだ。
取材・文/久保慎 集英社オンライン編集部