「ここにいるのが私の役目」

そんな本間さんも今年で還暦を迎える。今後について尋ねると、「もしかしたら再び生活保護を受けて違うところで生活するかもしれないし、それはわからない」と話しつつも、「ここにいるのが私の役目なのかなとも思うよね」と微笑む。

「もしかしたら自分の息子だけじゃ子どもが足りなかったのかもしれないね(笑)。やっぱり界隈民に『ママに会えるだけで安心する』とか『とにかくいてくれるだけでいいから』と言われるのはすごく名誉なことだし、今は歌舞伎町から離れて生活してる人が、わざわざ会いにきてくれたりすると素直にうれしいよね。

もちろんこの先のことはわからないけど、こうしていろんな人の支えになれるのは、ほかの人にはできない天職なのかなと思う」

酒盛りをする界隈民たち
酒盛りをする界隈民たち

時刻は夜の9時すぎ。トー横広場に行くと、イベント用スペースとして封鎖された柵の外では20人近くが地べたに座りながら酒盛りしていた。年代は10代~70代までさまざまで、地雷系ファッションに身を包んだトー横キッズのほか、先ほどまで新宿大ガード下にいたトー横ミドルの姿も目に入る。

アコースティックギターで中島みゆきの「糸」を弾き語りする50代の男性もいれば、泥酔したのか地面に倒れている男性までいた。トー横キッズの少年は「ここにはキッズ以外にもいろんな大人がいて楽しいっすよ」と言う。

「一応グループはわかれてますけど、終電後は合体して大人と一緒に飲むこともあるし、そのときは『お前たちもたくさん飲めよ』と言って缶チューハイをおごってくれたりします。それと、大人たちは経験も豊富なので、僕たちが市販薬をOD(=過剰摂取)してヤバくなったときは助けてくれる。『ひたすら水飲ませとけ』とかアドバイスしてくれるので頼りになりますね」

新宿・歌舞伎町の中心では、こうして今宵も終わらない宴が繰り広げられるのだった。

取材・文/神保英二