昇進していない巡査長が「評価を高めたかった」に違和感 

「藤井被告は公安畑の警察官で、県警は藤井被告が『情報を漏らす見返りに捜査にかかわる別の情報を得ようとした。組織内で自分の評価を高めようと思った』と供述したと説明してきました。しかしこれには違和感があります」と地元記者は話す。

「理由は藤井被告の巡査長という階級が警察の正式なものではなく、まったく昇進しない警察官の“名誉階級”のようなものだからです。

実際には最下位の「巡査」と同じ階級です。公安というセンシティブな部署に配属される藤井被告なら昇任試験を受け階級を上げようと思えばできたはずですが、49歳まで事実上一階級も昇進しておらず、出世に関心がなかったとしか思えません。そんな人が評価を欲するでしょうか」(地元記者)

実は鹿児島県警は、藤井被告を逮捕した4月8日に、Cさんに対する捜索も行なっている。スマートフォンを押収されたCさんは複数回、参考人としての事情聴取も受けた。

「警察は私が藤井さんに漏洩をそそのかしていないか疑ったようです。結果、そうした行動も金の動きもないことが確認されています」(Cさん)

さらに、藤井被告と本田容疑者の情報持ち出しが続いたことについて、Cさんは続けた。

「強制性交事件の捜査の問題に共感をしてくれた警察内部の人が、組織をよくしたい、という思いで(情報提供を)やり、それが広がって今(の本田容疑者の事件)があるんでしょう。

本田容疑者が全く同じことをやったというのは(藤井被告の)影響を受けたんだろうなと思います。『おれもやったるわ』と思ったのでしょうね」

(本田尚志・前生活安全部長NHKより)
(本田尚志・前生活安全部長NHKより)

「藤井被告が本当の動機を言うかどうかは分からなくなってきた」 

目を引くのは、初公判も迎えていない藤井被告が既に保釈されていることだ。6月12日、藤井被告は地元テレビ局に直撃され、本田容疑者とは「全然面識がない」と言いながら、「逮捕容疑に間違いはないので、裁判の中で申し上げることになる。それしか申し上げられない」「県民の方に非常に迷惑をかけた。組織に対しても迷惑をかけたのは間違いなくある。申し訳ありません」と話した。

「警察組織にたてついた人物の身柄拘束がこれほど早く解かれたことに注目しています。警察や検察が満足する供述を藤井被告がしているということでしょう。公判で本当の動機を言うかどうかはわからなくなってきたと思います」(社会部デスク)

藤井被告と本田容疑者。相次いで県警の不祥事を外部に知らせた二人の行動は歴史にどのように記録されるのか。市民の知る権利や報道の自由も絡み、波紋は広がっている。

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取材・文 集英社オンラインニュース班