迷惑な記憶力と独特の愛情表現
――爪さんは、小学生の頃の細かなエピソードをよく記憶していますよね。しかも、あまり女子が触れられたくないようなことについて。
爪 鈴木さんが解説に書いてくれた「迷惑な記憶力」っていうのは、全くその通りだと思いますね。そりゃあ、みな、そこまで覚えておいてほしくないと思いますよ。
あの本を書いた時に、「昔好きだった女の子たちに会いに行けますか?」って聞かれたけど、行けるわけないじゃないですかって(笑)。
鈴木 そうですよね。爪さんの独特な文体じゃなかったらかなり際どい企画っていうか、女性たちから怒られたり嫌われたりしても仕方ないところはある本かも。小学生の女子に口ひげが生えていたとか、そういう過去を書かれていてはね……。
私だって、生まれた時から顔を剃っているわけじゃないから、変なところから毛が生えていた時期もあるわけですよ。だけど女性は最初からツルツルしていますって顔して生きているわけで、そこを掘り起こして書かれるという……。
どれも、私だったら言われて死ぬほど救われるか、死ぬほど恥ずかしいかですけど、とにかく微妙な愛情表現がにじみ出た文章だなと思って。もちろん、嫌いと言われるより好きって言われたいんですけど、ブサイクだけど好きって言われるよりも、綺麗だけど嫌いって言われた方が嬉しい時期もあるわけです、女性には。
爪 嫌いってほとんど言ったことないですね。本当に、心の底から嫌いな女性がいない。いじめられたりひどいことを言われたりしても、嫌いにはならないですね。
鈴木 すごいです。私、たいして嫌じゃない人のほころびを見つけて悪口を書いて生きてきたから(笑)。例えば、自分の本の中でMr.Childrenの曲のことを悪く書いているけど、別に、私はミスチルがすごく嫌いなわけじゃないんです。
カラオケでミスチルを歌っているホストは嫌いだけど、ミスチル自体にはそんなに恨みはないし。よくよく歌詞を読んだらここは気になるとか、こういう言い方をする男は嫌だとか、悪口がどんどん出てくるだけで。
でも、爪さんみたいに、一見なんでもないところを褒めるとか、好きになれるっていう方が、人生は豊かになる気がしますよね。私は心がわびしい感じがする。一緒に住むほど好きだった男性についても、今振り返ると悪口だけで一冊書けると思う(笑)。どこが好きだったかなんて書けないかもしれないです。
爪 それは僕と違うかも。僕は小さい頃からしょっちゅう親父に「お前はモテない」って釘を刺されてきたので、恋愛に関して高望みしないんですよね。というか、女性に対して信仰や崇拝に近い思いがあるんです。
鈴木 私は男性を、女性みたいに純粋な友達として見られないんだと思います。恋人としてどうかとか、性的な目線で見てしまう。だから、ミスチルの桜井さんも星野源さんも、この男と付き合ったらどうかっていう目線ですぐ見ちゃう。
星野源と結婚したらめんどくさそうだなって思うから(笑)、悪口が出てくるっていうか。
写真/shutterstock
撮影/織田桂子
構成/土佐有明