法的制裁は? 弁護士に聞いた

気になるのは同グループへの法的制裁だ。飲食業界の法律問題に詳しい法律事務所フードロイヤーズの石﨑冬貴弁護士は言う。

「昨年1月、回転寿司チェーン『スシロー』のテーブルにあった醤油さしを少年がペロペロと舐め、その動画が拡散してしまった事件に対し、運営会社『あきんどスシロー』は少年に対し約6700万円の損害賠償を求めて2023年3月に大阪地裁に訴訟を起こしました。

ですが、『(少年側が)責任を認め、当社として納得できる相応の内容で和解した』として同年8月に訴えが取り下げられ、和解が成立しました。今回の件は実行した者の異常性が明らかに高く、スシローのときのように模倣犯の恐れは少ない。とはいえ、富士達さんも厳しい対応をする可能性は十分にあると思います」

被害にあった「七輪焼肉 安安」新宿職安通り店(撮影/集英社オンライン)
被害にあった「七輪焼肉 安安」新宿職安通り店(撮影/集英社オンライン)
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全国に160店舗を構える「安安」のこだわりは「安全で安心、さらに安く」という、この物価高の時代に救世主のような焼肉チェーンだ。この騒動の影響はあるのだろうか。

5月8日19時ごろ。被害にあった「七輪焼肉 安安」新宿職安通り店に訪れてみると、夕食時ということもあって店内のテーブル席は7~8割の席が埋まり、いつもどおり繁盛していた。

フロアでせわしなく働く3人の外国人店員のうちのひとりに「大変でしたか?」と聞くと「ソウダヨ、何日か、店舗は休みになったヨ」と答えた。また、動画が撮影されたと思われる座敷スペースについて聞くと、「あっちに今はお客さんを入れてない」ということだった。

動画投稿から5日後の5月7日、「安安」は公式サイトにて、「迷惑行為の判明後、直ちに同店を営業停止とし、全てのジョッキを新品に入れ替え、店内及び設備の除菌清掃、食器類の消毒を致しました」としたうえで、「警察と相談させていただきながら、お客様を不安にさせる行為には厳正に対処してまいります」という声明を発表している。

取材・文/河合桃子
集英社オンライン編集部ニュース班