「宝島か関根か、どちらにつくのかと言われるかもしれない」

一方、殺害された宝島さんは20年以上前に中国から留学生として来日し、そのまま日本に定住した。

「留学生時代にアルバイトで頑張って金をためて、羊肉の串焼きの店を開いていた。そこは経営がうまくいかなくて店をたたんだけど、たしか幸子さんはその串焼き店に客として出入りして宝島さんと知り合ったと聞いた。

宝島さんはその後、串焼き店の失敗を活かして飲食業に本格的に乗り出して、上野に集中的に店を開くまでになった」(上野の飲食店関係者)

宝島夫妻(知人提供)
宝島夫妻(知人提供)

その宝島夫妻の長女と関根容疑者が出会って内縁関係となり、関根容疑者は宝島夫妻の飲食業経営を支えるマネージャーとして頭角を現していく。

ときには近隣の店との客の奪い合いに端を発したトラブルで、幸子さんと一緒に相手の店に乗り込むなどサンエイの経営に体を張っていたようにもみえる。

だが実際はそれほど単純な人間関係ではなかった。♯22で指摘した通り、サンエイが系列としてうたっている14店舗のうち、関根容疑者が事実上経営をしている店が5店舗程度あり、ここの売り上げが好調だったことをおもしろく思わない宝島さんと関根容疑者との間で経営の主導権を巡る軋轢が深まっていた。

宝島さんが実権を奪おうとしたことに反発する関根容疑者が「(店を)取られるくらいなら、こっちから取ってやるか」と口にするのも知人が聞いており、対立は深まっていた。

ライバル店を威嚇する関根容疑者
ライバル店を威嚇する関根容疑者

「関根容疑者は今年2月、系列店の店員らにSNSで、自分が主導してきた店のスタッフへの賃金支払いは4月から宝島社長が行うようになるので賃金が下がる人もいるかもしれない、と伝えています。

そのメッセージの中で『納得できなければ言い返せ』『宝島か関根か、どちらにつくのかと言われるかもしれない。思いの丈を(宝島社長に)伝えて構わない。その結果何か嫌なこと言われるかもしれませんが。私はみんなの側にいる』とも表明していました。そして『4月末までにはすべて片付けます』とも書いていました」(店舗関係者)

「4月末」とは、今回の事件のことを念頭に置いていたのだろうか。