独創的なプレ・イントロが光る
第10作『探偵たちの鎮魂歌(レクイエム)』、第11作『紺碧の棺(ジョリー・ロジャー)』
第5作から第9作まではプレ・イントロの使いまわし(第5作・第6作・第9作、第7作・第8作が同じ)をしているが、第10作と第11作では、新しいプレ・イントロを1回こっきりで使っている。
第10作『探偵たちの鎮魂歌(レクイエム)』は、ヒーロー感漂うコードの一打(たぶんCm7)でイントロを導くパターン。劇中では、仲間が人質となったことを知ったコナンくんが駆け出すシーンでインサートされ、効果抜群だ。イントロ後のメロディーはギターデュオでつむがれる意欲作でもある。
続く第11作『紺碧の棺(ジョリー・ロジャー)』は初見殺しの〝コナン読み〟が強烈な作品。その謎めいたタイトルに合わせてか、プレ・イントロもミステリアスな雰囲気に。これはオーギュメントコードを2回使った音作りだ(D♭aug→Caug)。
ちなみに、本作の2コーラス目のアドリブ・ソロはキーボードが担当している。この使い方は実は『コナン』史上初で、めちゃくちゃカッコいいので必聴だ!
……と多様なアレンジのほんの一端をつまみ食いしてきたが、ここまで一貫して手をつけてこなかった、音楽的には非常に大事な要素がひとつある。第11作まで、Fマイナー(ヘ短調。楽譜で記すときは♭が4つになる)を主調とする〝調性感〟だけはかたくなに守られてきたのだ!
そこにまで手を加えるようになると、アレンジの幅はまたドカンと広がるわけだが……。後編では、第12作から最新作となる第27作までのメインテーマのアレンジ変遷を解説する。
〈後編へつづく〉
取材・文/前川仁之