消費者は直営店からディスカウント店の廉価版に向かったか

アディダスの2023年10-12月のアメリカエリアは25%の減収。ヨーロッパの売上高も10%減少した。2022年10-12月はアメリカが18%、ヨーロッパが13%の増収だった。スニーカーは2023年に入って、突如として売れなくなってしまった。

背景にあるのは、急速なインフレによる消費の低迷と投機的な水準まで高まっていたスニーカーバブルの終焉だ。

アメリカの2023年通年のインフレ率は4.1%だった。2022年は8.0%まで高まっていた。ただし、インフレ圧力が強まる中でも、景気の腰折れ懸念は払しょくされている。2023年通年の実質経済成長率は2.5%。2022年の1.9%から増加している。個人消費が底堅く推移しているのだ。

写真/shutterstock
写真/shutterstock

小売店は強気の値上げを断行しているが、消費意欲が旺盛なのは富裕層だ。中間層や低所得世帯は生活必需品への支出に切り詰めて、節約志向を強めている。中間層向けの百貨店を運営するメーシーズの2023年度通期の売上高は230億ドル。前年度比で5.6%減少している。同社は不採算店150店舗を閉鎖する計画を明らかにした。

その一方で好調なのがディスカウントストアだ。食料品から雑貨、家電などを大量に仕入れて格安で販売するウォルマートの2023年度の売上高は、前年度比6%増の6481億ドルだった。業績は極めて堅調に推移している。同じくディスカウントストアを運営するバーリントン・コート・ファクトリーも2023年度は1割の増収だった。

ナイキは2023年12月-2024年2月のEC売上高が、2015年以来で初めての減少となっている。メーカーが高単価で販売できる直販ECサイトや直営店から、消費を支える中間層が離脱。ディスカウントストアの廉価な商品に行き着く様子が浮かび上がる。インフレがスニーカー熱を冷ましてしまったのだ。