バルミューダは雑誌「AXIS」と組んでスマホ用フォントを開発

フォントは美観や読みやすさに直結するので、それだけ差別化要因になる。映画やアニメ、コミックなどが作品中で使うフォントにこだわるのもそのためだ。

家電メーカーのバルミューダは、同社が販売中のスマホ「BALMUDA Phone」のシステムソフトウエアを、5月19日にアップデートした。カメラ画質やタッチ操作の改善など、多数の要素が含まれるが、中でも最も大きな改善点が「システムフォントの変更」だ。BALMUDA Phoneでは、多くのAndroidスマホで使われている「Noto Sans」が使われていたが、今回から、同社が独自に用意した「AXIS Balmuda」が標準フォントになる。「AXIS Balmuda」の「AXIS」とは、デザイン雑誌の『AXIS』のこと。『AXIS Font』を開発したタイププロジェクトに協力を依頼し、AXISフィットフォントから、スマホの画面に合わせて調整したものを採用している。

なぜフォントを変えたのか? BALMUDA Phoneの開発を担当する、バルミューダ株式会社・ITプロダクツ本部の一之瀬春人本部長は、

「スマートフォンでは文字を読む時間が長い。ならば、我々が『より読みやすい』と考えるフォントを搭載すべきだ」

と理由を説明する。「AXIS Balmuda」は細身で字形がゆったりとしており、特に長文を読んだときや、小さい文字を表示した時の読みやすさが優れている、と同社は主張する。

BALMUDA Phoneは昨年11月、同社として初めて取り組んだスマホ。発売開始時の価格が高かった(10万4800円)こと、その割に組み込まれているパーツの性能が低かったことなどから批判された。同社としてはその批判を受け止めた上で、積極的にソフトウエアの刷新などを行い、「バルミューダとしての価値はどこか」を示そうとしている。同じような試みはフィーチャーフォン(ガラケー)の時代にはあったが、スマホになってからはあまり各社が目を向けていない。そこで「フォント」にこだわるのは、確かに面白い着眼点だ。

「作品イメージ」から「見やすさ」まで影響を与える「フォント」開発の裏側_5
BALMUDA Phoneは5月19日にアップデートし、標準フォントを、読みやすさ重視で設計された「AXIS Balmuda」に変えた(撮影/西田宗千佳)

製品に対する印象はデザインで変わる。フォントももちろんデザインの一部であり、商品を代表する「顔」として、毎日対面する部分になる。アップルをはじめ、そうしたところに気を使っている企業は意外と多く、バルミューダのスマホも、そこで1つテコ入れをした、ということなのだ。