――集英社ゲームズとしては、ゲームクリエイターさんをどうやってサポートするのですか。

 弊社のプロデューサーが投資先の各ゲームの開発チームに必ず一人は付いて、さまざまな観点でゲーム開発をサポートします。プロデューサーはどの方もゲーム業界歴の長いベテランで、ゲームクリエイターさんも安心できる人材を揃えています。漫画でいうところの編集者のようなポジションをゲーム業界でやっているイメージですね。

山本 ゲームクリエイターさんの中には、僕らが関わる関わらないを問わず、理想のゲームを膨大な時間をかけて作られている方もいます。僕たちがそんな彼らと一緒にゲームを作る意味は、彼らに魅力的なゲームを1本でも多く世に出してもらえるよう、クリエイティブに集中できる環境を提供すること、一人でも多く手に取って遊んでもらえるよう、最大化する方法を常に考えること。これらができないとプロデューサーとしては名折れだと思っています。

3Dアクション『ONI』は、山本氏がプロデューサーを務めている

――チームにベテランの方が入るとゲーム内容を自分好みに変える、ゲームクリエイターさんに気を遣わせてしまってギクシャクする、なんてことにならないでしょうか。

 集英社ゲームズのプロデューサーは、ゲームクリエイターさんの才能支援に徹して、その作品を成功に導く役割です。そのことを理解した人を採用すべく、プロデューサーの選抜は慎重に行っています。

――プロデューサーさんだけではカバーできないことも発生するかと思います。

 そういった問題はもちろん出てきます。そんなときはプロデューサーの伝手でゲーム業界で経験豊富な各分野で一流の方をアドバイザーとして招いて、作品に参加していただくことも多くあります。シナリオを良くするためにゲームシナリオの経験豊富な方とのディスカッションの場を設けたり、グラフィック作りの技術力を身に着けるために、その道の経験豊富な方をアドバイザリーに入ってもらったりとか、いろいろな形でご協力いただいています。

そういう方々には副業として依頼していることも多く、週に1、2時間とか期間を話し合って決め、双方に負担が重くならないよう調整しています。

こうした、複数のゲーム業界のプロの方々にに協力を仰ぎ、アドバイザリーのような形で、経験が浅いチームの作品をパワーアップさせる手法はこれまでの日本のゲーム業界としても新しいやり方なのではと思ってます。それゆえにプロデューサーに求められることも必然的に多くなります。

「集英社ゲームズ」って何する会社なの? わからないので聞いてきた_2

――アドバイザーを務める方からの反応はいかがでしょう。

 開発チームが試みている新しいチャレンジを歓迎し、楽しんでもらえているように感じています。クリエイターさんと意気投合しない限りは推薦しませんし、開発チームとアドバイザーの方で盛り上がって、結果として格段にクオリティが上がっている作品が多いです。

山本 この点も今のゲーム業界のひとつの課題なのかもしれませんが、ある程度大きなゲーム会社に勤めると、雇用という意味では安定感はあるものの、クリエイティビティの部分で自分のやりたいことと、組織として必要とされるスキルの間でのフレキシビリティに欠け、自身のスキルを十分に発揮できず、フリーの道を選択する方もいます。だからこそ、そうした自分のノウハウを発揮したい、伝えたいマインドを持った方と、クリエイティビティはあれど実現する経験値が足りない方をつなぐ、良い取り組みにしていきたいと思っています。