学生運動の熱冷めやらぬ1970年代の過激で叙情的な邦楽3曲
『戦争小唄』泉谷しげる
人格者であることが知れ渡り、いまや好々爺の雰囲気すら漂わす泉谷が、本当にヤバい人間なのではないかと疑われていた1970年代初頭に発表した、超逆説的反戦歌。当然ながら、テレビ・ラジオ各局ではA級の放送禁止措置がとられていた。何しろ「みんなで殺そう戦争だ〜」である。いま聴いてもぶっ飛びすぎで、いたたまれない気分にさせられる。
『あしたてんきになあれ』はっぴいえんど
反戦思想とは縁の薄そうな、洗練された都会的音楽であるシティ・ポップだが、その先駆け的バンド、はっぴいえんどが1971年に発表したセカンドアルバム「風街ろまん」にはこんな歌が収録されていた。松本隆流の婉曲表現が素晴らしい、叙情的な反戦歌だ。ちなみにこの曲は1990年代末、当時の僕が編集部員をしていた雑誌「smart」のCMソングに採用、再注目されてシングルカットされた。
『軍靴の響き』頭脳警察
ボーカル&ギターのパンタ率いる頭脳警察は、かねてより激しさを増していた左翼学生による政治運動が矛の収めどころを見失っていた1970年にデビュー。政治的メッセージを多分に含む楽曲を次々と発表し、赤軍派学生を中心に熱狂を巻き起こす。この曲は、政治的に過激なメッセージが問題視され、発売中止となったファーストアルバム「頭脳警察1」(のちに改めて発売)に収められている。
1980年代の邦楽インディーズシーンから生まれたストレートな反戦歌3曲
『戦争反対』ラフィンノーズ
1980年代のインディーズブームを牽引したパンクバンド、ラフィンノーズの初期を代表するストレートな反戦歌。インディーズ時代に発表された曲だが、1985年のメジャーデビューアルバム「LAUGHIN’ NOSE」に再収録された際は『1999』と改題、歌詞も改変された。その後、インディーズに戻るとともに『戦争反対』として再々収録。現在もライブでしばしば演奏される鉄板曲である。
『爆弾が落っこちる時』ザ・ブルーハーツ
このほかにも『1985』『NO NO NO』『青空』など、キャリアを通して反戦メッセージを含む楽曲を多数残したブルーハーツの、もっともストレートかつアップテンポな反戦歌。1987年発表のファーストアルバム「THE BLUE HEARTS」に収録されている。ヒロトとマーシーの現在のバンド、ザ・クロマニヨンズの『むしむし軍歌』という脱力系反戦歌も必聴。
『Go! Go! 枯葉作戦』the 原爆オナニーズ
1982年結成、現在もアンダーグラウンドでコンスタントに活動を続けるパンクバンド、the 原爆オナニーズの代表曲。歌詞は「Go! Go! 枯葉作戦」と「Go! Go! サリドマイド」の2フレーズだけの単純な曲なのだが、人類史上稀に見る悲惨な戦場となったベトナムの情景、そして同時代の歴史的薬害のことが、頭の中をひたすらグルグル回って離れなくなるようなトラウマソング。