作品にかけたこだわりは、たとえばQ Frontを模した「O Front」を見るとよくわかる。ビル内の柱や階段、店内でくつろぐ人々や、内側から貼られた文字など、これでもかというほどの作り込みをガラス越しに見ることができる。内部から外観まで全て自作で、映像が映るスクリーンも、中にi Phoneを置けば再現できるという。

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1階のカウンターや階段しっかり再現されている

それ以外の建物も全て自作で作られており、レーザーカッターで正確に切り出した紙素材を組み合わせている。一方で、建物に添える室外機や、センター街入り口の柱などの小物は、3Dプリンターを利用しているという。

自作のパーツには色がないので、色も塗らなければいけない。一般的に模型の塗装は、筆塗り、またはスプレーかエアブラシで塗料を吹き付けるが、MAJIRI氏は、基本的にはエアブラシを使用。エアブラシでは難しい細部や構造物の経年を表現するための塗装(ウェザリング)は筆塗りで行う。ビルの屋上や線路の側壁を見てみると、下部の画像のとおりちょうど良い具合に汚れが。多彩な工法を駆使し、細部まで全て自作、そこにMAJIRI氏のこだわりが表れている。

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屋上の再現にも徹底的にこだわる(編集部撮影)

しかし、それだけ長時間かけて作品を作っていたため、モチベーションの維持に苦労したという。加えて、制作開始当初は和歌山に住んでいたため、渋谷を現地取材することもできず、友人に屋内・屋外の両方で写真を撮ってもらったり、Google Mapを徹底的に参照するなど、資料集めにも難儀した。

渋谷だけでなく「箱崎ジャンクション」も再現した理由

「ジオラマを作るのは大好きですけど、あれだけのことをやろうと思うと時間がかかるので、モチベーションを保ち続けるのが一番難しいところでした。1年間ずっと作っていたわけではなく、途中に箱崎ジャンクションを作っていた時期もありました」

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箱崎ジャンクションのジオラマ。とてもモチベーション維持のために制作したとは思えない

一つの作品へのモチベーション維持の難しさを、別のジオラマを作ることで乗り切ったが、当初は渋谷スクランブル交差点付近の全てのビルに電飾を施し、光を灯すことで夜景の再現も考えていたという。それには途方もない時間がかかるため断念したが、その夢は未だ潰えていないようだ。

「今後、もう一回渋谷を作りたいなと思っていまして。その時には全てのビルなどに電飾を仕込んで、さらに109(SHIBUYA 109)のほうまで含めて、より広域を再現した作品をリメイクしたいなと思っています」