理想は「いつの間にかブロックチェーン技術が使われていること」
——小林さんは今後のブロックチェーン技術にどんなことを期待していますか?
ユーザーが意識しないところでブロックチェーン技術が使われるようになれば、と思っています。
たとえば人気スマホゲーム『Pokemon GO』には、とある先進技術が使われています。ですが、それを意識している人は少ないと思うんですよ。
——それは何の技術でしょうか?
現実を仮想的に拡張する「AR技術(Augmented Reality)」です。これは高度な演算処理が必要な技術で、かなりハイスペックのデータベースサーバーを使って再現しています。知っている人からすると、とてつもない技術なんですが、一般ユーザーがそこを認識して「AR技術がすばらしいから」と言って『Pokemon GO』をプレイしている人は少ないというか、ほぼいないと思うんです。
このAR技術のように、ブロックチェーンも「いつの間にか生活の中に溶け込んでいる」のが理想だと思っています。例えば、スマホアプリなどでお金を振り込む際に、いつのまにかブロックチェーンが使われているとか。自分が所持する不動産や株、その他資産性のあるものがスマホアプリで管理でき、それらを売買したり譲ったりできるとかですね。
——資産の管理など、将来的にブロックチェーン技術で実現できそうなことを教えてください。
ブロックチェーンであればデータの取引履歴がログとして残るので、元々は誰のもので、どういう経路で現在自分の手元にあるのかも明白です。たとえばお金の送受信を行う際、通常のデータベースでは送金主の口座から送金額を引き、送金先の口座に送金額を足して処理します。このとき小数点以下の数字も合ってないとシステムの整合性がつかず、システムの細かなエラー管理が必要です。
一方でブロックチェーンの場合は、その履歴が送金したこと、受け取ったことの証明になるので、そういった処理を省略可能。さらにシステム上のバグが起きにくいというメリットもあるんです。そういうブロックチェーンの機能を活用し、履歴をすべて残せるからこそ、銀行システムに対する不安もひとつ減りますよね。
とはいえ従来のデータベースのほうが得意な領域もあります。ブロックチェーンは処理の特性上、「処理速度に課題がある技術」といわれています。秒間でたくさんのデータを表示させたり、情報を頻繁に上書き保存したりすることには不向きです。たとえば、情報処理の速度が必要な「WEB広告」とはあまり相性が良いとはいえないですね。
ボールペンとシャープペンに例えると「履歴書は誰かに書き換えられると困るからボールペンで書く」「授業の板書は間違えたら書き換えられるようにシャープペンで書く」というように、従来のデータベースとブロックチェーンが使い分けられるといいでしょう。
みなさんが気づかないうちにブロックチェーンが生活の中で活用されて、データや資産の安全性を高めてくれたり、行動の確かさを証明してくれたり。そういった未来が早く来たらいいなと思っています。
取材・文:平林亮子 撮影:塩川雄也