2022年最大のエンターテイメントに感動!
ああ、娯楽作品を見てこんなに感動したことが過去にあったでしょうか。
『トップガン マーヴェリック』(2021)を見終わって、うれしくなりました。高額の製作費を注ぎ込み、テクノロジーを駆使した迫力の映像。1ミリの隙もないディテールへの気配りとシンプルなヒューマンストーリー。まさにハリウッドならではの超娯楽大作です。
主演と製作を兼ねたトム・クルーズは、パンデミック下においても、ストリーミング配信ではなく劇場公開にこだわったそう。そのため、映画ファンは「公開までどれくらい待つのかな?」と一抹の不安を抱えていたけれど、ハラハラの2年間を経たトンネルの向こう側には、輝く青空が待っていた、今まさにそんな感じでしょうか。
前作は、1986年に公開された故トニー・スコット監督の『トップガン』。大空を凄いスピードで飛ぶ戦闘機。そしてそれを操縦するトム・クルーズ演じる熱血の“マーヴェリック”と、ヴァル・キルマー演じるクールな“アイスマン”が空中でにらみ合い、スピードを張り合うさまに世界は大熱狂。『トップガン』は大ヒットし、トムを一躍スターの座に押し上げました。
36年後の続編で戻って来たマーヴェリックは、相変わらずスピードに命をかけていました。「いまだにそんな階級か」と年下の上官に笑われても、受け流して任務を遂行しています。今作ではマーヴェリックが人生経験を積んだベテランパイロットとして描かれていて、無謀で怖いもの知らずだった36年前の彼とはちょっと違う。その成長ぶりを見て泣けてきました。
試写室で横に座っていた男性(30代くらい)は、何回か眼鏡をはずして感動の涙をぬぐっていたし、後ろに座っていた男性は監督への質問の際、「1986年の『トップガン』を見て軍に志願し、7年間務めました」と誇らしげに語っていました。ちなみに1986年の『トップガン』公開当時、海軍航空部隊への入隊志願は5倍になったそう。
「いつも『トップガン』の続編は? と聞かれていたけど、オリジナルよりずば抜けてエキサイティングなものが保証されない限り作る気はなかった。仕事を決める大きな要素のひとつは、チャレンジしがいがあるかどうかということ。撮影テクノロジーが、実現させたい映像に追いつくのを待っていた感じだ。そして僕自身がF /A-18戦闘機に乗ること。それが条件だった」とTVのインタビューで笑っていたトム。
これならトムが出演をOKしてくれるかもしれないという自信のある脚本と、F /A-18に搭載できるカメラの完成を待ち、ジョセフ・コジンスキー監督とプロデューサーのジェリー・ブラッカイマーは、パリで『ミッション:インポッシブル/デッドレコニングPART ONE』(2023年公開予定)を撮影していたトムに直談判に行ったといいます。
その結果誕生したのが、2022年最大のエンターテイメント!
この素晴らしい作品を送り出してくれたトム・クルーズについて、40年以上取材でかかわってきた思い出を掘り起こし、その成長と変遷を振り返ってみたいと思います。