コミュニケーション力と「カッツの理論」

日本経済団体連合会が発表した「企業が社員採用時に求める資質」に関する調査によると、ここ十数年間、第1位に選ばれ続けているのは「コミュニケーション能力」だ。転職前に学ぶべきことの3つ目もまた、この力だ。

「コミュニケーション力が世の中に求められるのは、何をするにも必要になる能力=ベーススキルのひとつだからです。ベーススキルには、問題解決力や課題を設定する力、自分を律する力、自己管理力などがあって、どれも磨いていただきたいのですが、その第一歩として何からやればいいかとなると、断然、このコミュニケーション力になります」

その背景のひとつに、テクノロジーの発達がある。今、人間の専門的な能力のほとんどは、AIや機械工学、業務のデジタル化といった最新技術に取って代わられる時代に入っていると岡崎氏は言う。

「たとえばホームページをつくるとき、ひと昔前までは専門知識がないと難しかった。それが今では、ホームページの雛形を簡単に作成できる『ペライチ』というサービスを利用すれば、ITのスキルがまったくなくても立派なホームページや通販サイトなどがつくれるようになっています。

ですから、専門分野のスキルで一流になると決めている方は別として、そうでない場合はコミュニケーション力をつけるだけつけておいて、困ったらプロの力を借りるという考え方のほうが、経済的合理性が高いと言えるでしょう」

そしてこの“コミュニケーション力最重要説”の根源には「カッツの理論」と呼ばれる法則があるという。まさに転職にも“勝ッツ”この理論とは、企業の人材を「現場層」、「中間管理者層」、「経営者層」の3つに分けたとき、各層で求められる能力が異なるというもの。

「専門スキル、たとえばホームページをつくれるといった能力は、出世するほど必要性が下がります。なぜなら、現場の人に任せられるからです。その代わり、立場が上に行くほどコンセプチュアル・スキル(思考する能力)が求められるようになります。

そして出世しても現場にいても変わらず、ずっと求められる能力がコミュニケーション力。実際、一定のコミュニケーション力が認められないと出世させないという企業も少なくありません」