事前の同意よりアフターケアのほうが大事
──三浦さんは、ご著書の『孤独の意味も、女であることの味わいも』の中で、自身が中学生時代に受けた、集団による性暴力事件についても描かれていますね。
私からすると、私が過去に経験したような性暴力と、ワンナイトで相手が自分を大事にしてくれなかったみたいなケースでは、暴力の度合いが違うと思うんです。計画的に女性をさらって性暴力をするのと、何の気もなしだけどもしかしたらあれは無理やりだったかなって事例では、悪人度が違うじゃないですか。
強制性交等罪が不同意性交等罪に改正されてから、そうした明らかな「強姦」の罪が軽くなっちゃったような気がしています。
──三浦さんがいう、不同意性交等罪に問われるようになったひどい男と、そうでない男の違いはどの辺りにあるでしょうか?
今の風潮でいうと、初めは同意もしたし、途中何度も確認したけど、最終的にこれは不同意だった、ということで告発されたり訴えられたりするケースがあり得ますよね。
私はそれに関していうと、本当にセックスもよくて、ちゃんと避妊もして、事後的にも優しくて、すごく素敵な1日だったと思える場合、告発したい訴えたいって思う人はいないと思うんです。事前の同意という点にばかり焦点が当たりますが、事前の同意よりアフターケアのほうが大事なんです。事後がしっかりしていないと「関係を結んだけど最低な男だった」となるんです。
──事後も大事というのは言われてみれば当たり前のことですが、どうしてそれができないのでしょうか。
男性はどうしても本能が強いから、その日の夜にベッドインできたかどうかを基準にデートの成否を測ったりしてしまいがちですね。女性も即物的に「この人と付き合ってなにが得られるのか」と思っちゃうから、3,000円のタクシー代がケチとか言いはじめるわけじゃないですか。功利主義的になりすぎるのが、承認欲求を飼いならせない人たちの地獄なんですよね。この地獄は年齢関係なくあることなので、そこを乗り越えられることが大事だと思います。
──乗り越えるために、どのようにしたらいいでしょうか。
その人に幸せになってほしいという気持ちや、その場で素敵な笑顔を見られたり楽しい時間を過ごせたりした事実を、もっと注視できるようになるといいのかなと思います。
とりとめのない話を一緒にできるっていうのが、友人やパートナーと時間を過ごすことの楽しいところです。どうでもいい話を一緒にするって、無目的じゃないですか。"無目的な時間が尊い"という感覚を持てるかどうかが大事だと思います。
人間は愛情を持ち出したりセックスをしたりすると「自分はやってあげたのに」と、どうしても功利主義的に思ってしまうので、その場の無目的な楽しさを共有することに、改めて立ち返ったほうがいいと思います。
取材・文/山下素童 撮影/野﨑慧嗣