アパートに住み始めたのは2年くらい前からか

両県警は突入に備え、時間をかけて慎重に準備を進めていたようだ。別の50代女性はこう語る。

「なんでも犯人にバレないように昨夜からアパートの住人たちは近くのホテルに避難させられて、かん口令も敷かれたそうですよ。そんなことを知らされてない私たちとしては、夜も明けぬうちに発砲音がしてびっくりしましたけどね。

アパートの1階には美容室とかカフェとかコインランドリーも入ってるから、町のみんなもよく使うし、横を通れば誰かしらはいるくらいには人通りがあるようなところなんですよ。そんな目につくアパートに逃亡犯が住んでいたなんて夢にも思いませんでした」

「潜伏」というには余りに目立ちすぎるようなロケーションを逆手に取ったのか、金容疑者は長期にわたってこのアパートを拠点にしていたようだ。近くの60代男性は噂を耳にしていた。

「容疑者があの部屋には住み始めたのは、2年くらい前からだと思います。町内会費の回収にまわってた人が言ってましたから。でもちゃんと支払われたことはないみたいで、『住んでるはずなのにいつ訪ねても誰も出てこない』とこぼしていましたよ。

夜には電気がついてるし、スウェットとかジャージみたいな格好で細身のおじさんが入っていくのを見たって人もいたから『おかしいね』と噂にもなっていたんです。実際に住んでいたのが銃を使った凶悪犯だったなんて、町の人たちに何もなくて本当によかったですよ」

警視庁管轄の交番にも貼られていた金容疑者の手配書
警視庁管轄の交番にも貼られていた金容疑者の手配書

金容疑者は絆會の織田絆誠代表と少年時代から行動を共にしていた懐刀で、所属先の山口組から分裂を繰り返す過程でも常に側近として支えてきたとみられている。しかし、長期にわたる逃亡で組織内の空気も変わった可能性があると、暴力団捜査担当の社会部記者が語る。

「捜査当局への情報提供は匿名できていますが、かなり具体的でしたし、我々サツまわりは『身内の裏切りじゃないか?』と噂しています。金澤は絆會ではNo.2の若頭を務める有名人ですが、一般人にも“その筋”の人間だとわかるくらい特徴的な顔をしているわけじゃない。

ネットや一部メディアでは『連続企業爆破事件の桐島に関連してコチラも逮捕されたのでは?』と噂になっているようですが、それはまったく関係ありません。両県警は数日前から準備して、本人の行動確認をしてから踏み込んでいます。一部SNSでは銃撃戦があったことを思わせるような書き込みがありましたが、閃光弾を使用したことを勘違いしただけでしょう。

ただし、銃を所持している可能性が高いため、突入には慎重を期して経験値の高い特殊捜査班があたりました。金澤は突入時にもさして抵抗をみせることなく確保され、自分の身分も偽っていないので、おそらく観念したのでしょう」