人間によるものを買いたい

まず1つ目の研究は、「人間のアーティストはAIを恐れるべきか?クリエイティブAIの認識に関するレポート」と題された論文で、2019年に行われたものです。

この論文中では実験の参加者に、「人間が制作した絵画とAIが制作した絵画を買うとしたら、どちらを買うか」「人間が制作した音楽とAIが制作した音楽を買うとしたら、どちらを買うか」という質問に対して回答させています。

その結果、前者は90.1%、後者は93.1%の参加者が「人間によるものを買いたい」と答えています。

また、AIに任せたい仕事、逆に任せたくない仕事に関するアンケートでは、創造的な仕事や感情支援、高齢者ケアなど、いずれも感情や共感をともなう仕事が「任せたくない」と回答される傾向にありました(図4-4、図4-5)。

「本質的には人は人によってつくられた作品を好む」というが、それは作品の背景情報が評価に影響を与えているだけ? もはや見抜けなくなるまで発展したAI技術_2
出典: “Should Human Artists Fear AI?: A Report on the Perception of Creative AI”をもとに作成
「本質的には人は人によってつくられた作品を好む」というが、それは作品の背景情報が評価に影響を与えているだけ? もはや見抜けなくなるまで発展したAI技術_3
出典: “Should Human Artists Fear AI?: A Report on the Perception of Creative AI”をもとに作成

記述式の回答では、AIと創作に関して「AIによってつくられた芸術は、決して人間には受け入れられることはない」など、AIによる創作に関して相当に否定的なものが確認されています。

この研究が行われていた時点では、現在のようにAIと創作に関する激しい議論は世間一般では起きていませんでした。また、将来的に現在のような高性能なAIが登場するかどうかも不透明な状況でした。

それにもかかわらず、AIによる創作に関してこのような否定的な傾向が見られたことから、人間が根源的にAI(機械)によって一定以上自動化された創作に対して、否定的な感情を持つことがうかがえます。