一番の地獄は誰なのか?

さて、私は強制的に女衒を担わされた男性の話も聞いたことがある。

そしてこの立場が実は本物の地獄ではないかとも思っている。加害者であり被害者であるからだ。

女性には簡単ではないものの「断る」という選択肢がある。しかしこの女衒には、「断る」という選択肢がないに等しい。

力のある上司に「女の子を用意しろ」と言われ、毅然とした態度で断れる人がどれだけいるだろうか。先の「週刊文春」の報道では、女衒はVIPの名前を隠し、流出を防ぐために、スマホを直前に取り上げたそうだ。それだけ女性に逃げられないように、事前に彼女たちの行動・思考経路を予測し、それを封じるために姑息な手を使う必要があるのだ。

写真はイメージです 写真/Shutterstock.
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女衒経験者の依頼者さんや男友達に話を聞くと、

「“女の子が集まるまで帰ってくるな”と、1時間以上路上でナンパさせられ続けた」

「“一緒に歌ってくれる子探してこい”と、カラオケで言われた」
女の子だけの部屋や1人カラオケをしている女の子の部屋にとにかく突撃して回ることもあったそうだ。

当然女の子からはキレられ、怯えられ、やりたくもない突撃に彼自身の心にも大きな負担だったという。

「本当にこの子たちしかいけなかったわけ?」と、どうにか集めた女の子にも満足できず、露骨に不機嫌な態度をとられることも。状況のよくわかっていない女の子と不機嫌な上司、両方の機嫌をとりながらその場をなんとかやりくりする。

しかも権力を持った上司たちは、女性をあてがわれるだけでなく、自分の命令で若い男性が苦労していることにも楽しさを見出している。我々女性は限られた時間を耐えればいいものの、男性は職場を離れない限り関係が続くから下手なことも出来ない。あまりにも逃げられない環境に置かれている。

女性には疎まれ、上司のご機嫌は窺い続ける板挟み状態。女衒は地獄の中間管理職なの?

最近では、こっそりギャラ飲みアプリを用いて、女の子を調達している女衒がいる。彼らはその存在に大層感謝していた。しかし最初から堂々とギャラ飲みアプリを使えたらいいのだが、それでは納得しないのが、権力おじさんだ。

彼らは素人女性が大好きだが、ギャラ飲み女子や港区女子を“素人”とは判定しない。“お金を出したり気を使ったりせずとも自分を尊敬し好いてくれる、若くて可愛くて素直な完全素人女性“というファンタジーな存在を求めているのだ。

登場人物で楽しいのは権力おじさんだけ。若い女性と若い男性、その両者が今のシステムの中で圧倒的搾取をされ、疲弊している。

権力おじさん、いいですか? あなたの部下や後輩が用意した女性があなたに好意を抱くことはまずありえない。「こいつのせいで無料コンパニオンをする羽目に…」とうすら嫌われてすらいると肝に銘じておいてほしい。

写真・文/よもぎちゃん