バスケを学ぶことは大好き。自宅で勉強会をしていた中学時代
町田 ボールが来てからですか? それとも来る前にですか?
中村 来る前に、自分の周りがどんな状況なのかをパッと見て把握する感じです。あとは事前情報も大切です。当時、僕がプレーする上で大事にしていたことが2つありました。まず、サッカーの場合、4-4-2とか3-5-2とかそれぞれシステムがあるので、自分たちに対して相手はどんなシステムで、どんなポジションを取ってくるか、前段階で相手のシステムや戦い方の情報を入れておいたうえで、試合が始まった時に、その日の相手の状況をピッチ上で確認しておくのが一つ。もう一つは、自分の背中にいる相手のフォワードが、自分を積極的にマークしてくるタイプか、それともまったく気にしないタイプか。そういうところも見て、頭に入れてプレーしていました。
町田 情報を集めるという点では私も同じです。相手がどういうオフェンス、ディフェンスをやってくるかでチームのゲームプランも、自分がコントロールする場面も変わってくるので。ボールが来る前に把握するという点はバスケでもそうですし、何より私自身がそこをかなり意識しています。
中村 どのような場面で?
町田 たとえばチームがディフェンスからオフェンスに切り替わるとき。自分が最初にパスを受け取る役目になるので、もらう前に相手側の状況を見ておきたい。そこでどのように攻めるかを判断するので。
中村 確かに町田選手は切り替えがメチャメチャ速い。全体を見て長いパス、短いパスと選択肢を持っているので、町田選手がパスを出せる状態の時は、距離関係なく味方がチャンスとばかりに走っていく。あれは『私が持ったら走って』みたいに伝えているんですか?
町田 みんなが自然にパッと走ってくれます。
中村 これは僕も感じてきたことですけど、パスが出てこない選手が持っても周りは走ってくれないですよね(笑)。
町田 それはそうかもしれませんね(笑)。
中村 でも、そのパスがあるからこそ、ドライブで中に切り込んだり、外からスリーポイントなどプレーの選択肢が増えるのだなと。ただ町田選手を見ると、パスを出したほうが気持ち良さそうな印象を受けますよ。東京オリンピック準決勝のフランス戦ではオリンピック新記録の18アシストを決めています。オリンピックのアシスト女王。凄い。
町田 はい。シュートを決めることに対して楽しいと思ったことは特別なく、それよりも、アシストして、みんなが決めてくれることのほうが楽しいですね。相手が分からないように、アイコンタクトしたプレーでゴールが決まると、その選手と“だよね”みたいになり、楽しいです。
中村 それ、わかります(笑)。僕はアシストも大好きだったんですが、ゴールはゴールでとても気持ち良かったのでどちらも好きでした(笑)。個人的にはPGはコート上の監督のような役割だと思っていて。ちゃんと情報収集して適切に処理していくわけだから、監督からすれば町田選手ほど頼もしい選手なかなかいないんじゃないですかね。子どものころから、そういった判断の良さみたいなところはあったんですか?
町田 昔からバスケに関しては学ぶことが大好きで、いろんな情報を頭に入れてプレーするというのはやっていたかもしれませんね。ポジション的にもずっとPGですし。中学生のころは練習が終わった後に自宅でバスケの勉強会をやっていました。
中村 中学生で勉強会はさすが過ぎます。サッカーでも指導者にそうしろと言われるよりも、自発的にそういうことをやる方が身につくし、伸びると思います。町田選手の場合、背が小さかったことも関係していますか?
町田 関係していますね。背が小さかったので、大きい選手を相手にどうやればうまくいくんだろうといつも考えていました。私は、小さいころから負けず嫌いだったので、もし体が大きくても何かしら考えてプレーしていただろうなと思います。ただ、考えの深さや広さというのはここまでではなかったかもしれません。結果、体が小さくて良かったなと思います(笑)。
中村 それもさすが過ぎます。負けず嫌いも伸びる選手の特徴ですね。小学校で身長どれくらい?
町田 小6で138センチですかね。
中村 僕は136センチ。ほぼ一緒だ!
町田 憲剛さんは当時どんなことを意識していたのですか?
中村 サッカーもバスケもコンタクトスポーツですよね。自分も小さいし、細かったから、とにかく体の大きな選手と対峙するときに、いかにぶつからないでプレーするかを凄く考えました。だからポジショニングとボールのコントロール技術は自分でかなりこだわってやっていたかな。
町田 わかります。私もパワーでは絶対負けるので、逆に力を抜いて相手のパワーを流して、いかにクイックでやれるかを意識しました。
中村 「パワーを流す」、柳のようだ(笑)。
町田 相手の力を利用しながらドリブルで抜いていくというイメージです。