男性にも共感される“不倫したくなくなる”不倫マンガ誕生秘話

――『サレタガワのブルー』はどのように生まれたのでしょう?

セモトちか 作品は「こんなマンガを読みたいな」というものを生み出すようにしています。不倫をテーマにした作品は、ドラマや映画をよく観ていたこともあり、いつか絶対に挑戦したいと思っていたジャンルでした。また、世にある不倫をテーマにした作品の多くが不倫を“シタガワ”の切ない禁断の恋を描いたものが多いことに対して、「現実はそんなことないのにな」という気持ちがありました。それで「これまでにない不倫の現実を描いたようなマンガを作ってやろう!」と思ったんですよね。

――担当編集の北室さんから見て、サレタガワのブルーが4億PVを記録するほどの人気作品になった理由はなんだと思いますか?

北室 男性が主人公の少女漫画はあると思うのですが、その中でも男性側にもすごく共感を得られるように描かれているなと感じます。また、物語のテンポ感もすごく良くて、売れる要素を全部押さえているなと思います。
そういった要素が反映されているのは、セモト先生の感覚値が優れているのに加え、すごく研究熱心だからというのもありますね。たくさん取材をしたり、日頃からマンガをたくさん読んで「こういうところが良い」と客観的に分析をしたりして、自分の作品に投影させる技術がすごいんです!

――北室さんの分析ポイントにもありましたが、たしかに“サレタガワ”の男性である暢が主人公なのは珍しいですよね。暢を主人公にしたのはなぜでしょう?

セモトちか 私の周りの人の話を聞いたり、取材する中で、“サレタガワ”が女性であることが多いなという印象を受けました。そこで、世の中の男性に“不倫をしたくない”と思ってもらうにはどうしたら良いかを考えたんです。

その結果、男性を主役にして“サレタガワ”の辛さを経験してもらえたら、世の中から不倫をする男性が減るのではないかなと思ったんです。

――これまでに特に人気だった回を教えてください。

セモトちか 自宅のクローゼットに全裸で隠れていた浮気相手の和正と暢が対峙する回(61話)と、藍子と和正が裸のまま暢に土下座をする回(62話)は、物語が佳境に入るところだったこともあり人気でした。連載前から「こういうシーンは描く」と決めていたシチュエーションのうちの1つだったので、個人的にも思い入れがあります。

4億PV超の人気縦スクマンガ『サレタガワのブルー』ヒットの裏側!不倫のリアルと、徹底的にスマホ読者を想定したこだわり_b
伝説の全裸クローゼットが描かれた61話

北室 セモト先生は考えて考えて捻り出すより、いっきに情熱のまま描いたシーンのほうがおもしろい方なのですが、一番読まれたクローゼットの回はまさにセモト先生の持ち味が顕著に出ていたシーンかなと思います。

セモトちか たしかに。「(このシーンが)やっときたー!」と思いながら描いたシーンでした(笑)。