取材を活かして追求した不倫の“リアル”

――「サレタガワのブルー」には個性的なキャラクターが多く登場します。キャラクターのイメージは、どのようにして生まれたのでしょうか。

セモトちか 不倫を“シタガワ”にも“サレタガワ”にもたくさん取材しました。不倫を“シタガワ”の方には「絶対バレない自信がある!」という人が多かったのは発見でしたね。和正や藍子の発言のアイデアになっています。

それからキャラクターを描く際は、自分の中にキャラクターを降ろして描いています。だから、のぶくん(暢)に感情移入した時は「うっ…」と吐きそうな感覚に陥り、藍子を描く時は「こんなこと考える人を自分に憑依させるなんて!」と思ったりしましたね(笑)。

――なるほど。ちなみに藍子はファンの間ではサイコパスとかけて“アイコパス”と言われるくらい、モラルフリーな言動が印象的です。藍子というキャラクターはどのようにして作り上げたのでしょうか。

セモトちか 藍子は本当はイイ女なんですよね。私の中には持ち合わせていないような強さを持っている。“シタガワ”にも関わらず「慰謝料は絶対払わない!」と主張できる人なんです。

そんな藍子を描く上で、実は担当編集の北室さんの強さに影響を受けています。暢が独身時代に買ったマンションなのにも関わらず、藍子さんが「マンションは共有財産だから!」と言い張るシーンは、北室さんの発想があってこそ生まれた部分です。悩んだら「北室さんだったらこう言うかな?」と想像しながら藍子を描いていました。

北室 相手の落ち度を見つけて「そういうことをするから私がこうなったんだぞ」「私は悪くない」という戦法を、藍子にはどんどんやっていってもらおうと思って提案していました。女性の中には喧嘩の最中に話を徐々にすり替えていって、「あなたが悪い!」という風に持ち込むのが上手い人がいるじゃないですか。私も、プライベートではたまにそういうことしちゃいます(笑)。

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35話で暢に責任転嫁する藍子

――そうだったんですね。インパクトの強いシーンも多いのですが、ストーリーのアイデアは取材で得たエピソードから取り入れたものも多いのでしょうか?

セモトちか “シタガワ”のLINEのやりとりは結構参考にしましたね。ピンポイントで言うと、不倫相手に裸や局部の写真を送るというのは結構“あるある”だということを知りました。

私から見たらバレたら決定的な証拠になりかねないのになと思いつつ、“シタガワ”からすると結構スリリングで楽しいのかもしれません。“サレタガワ”の気持ちを想像すると厳しいですけどね。

それから「外で浮気して帰ってきた夫に、何事もなかったようにご飯を作らされた」と話していた女性が多かったのが印象的で、“サレタガワ”である主人公・暢が浮気して帰ってきた藍子のためにご飯を作るというシーンを入れました。どちらも「“サレタガワ”の気持ちに立ってほしい」という気持ちで、取り入れています。

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24話で浮気して帰ってきた藍子のためにご飯を作る暢

――作品には「浮気現場は3回押さえる」などの法律的なポイントもたくさん出てきます。現実的な法律のポイントを取り入れようと思った理由は?

セモトちか 不倫された時の対処法には教科書がないので、学びがあるマンガにもしたかったんですよね。不倫って自分の身に起こるまで知らないことが多いじゃないですか。例えば、不倫の時効は不倫の事実・相手を知ってから3年だということってほとんどの人が知らないと思うんです。不倫をされて許したとしても、後から「やっぱり嫌だ!」となる人も多いと思うので、そういう知識はきちんと知っておいたほうが良いと思って弁護士さんに取材をしました。

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実際の法律に関わる発言が描かれた第21話の1コマ

――リアルなストーリーを作る上で“これだけはブレない”という軸みたいなものはありますか?

セモトちか コメント欄はよく見ていますし「こうなってほしい」という意見も拝見しているのですが、それに左右されないようにしています。読者さんのことを愛しているので、自分の気持ちの中でせめぎ合いはあるんですけど、「こういうのはみんな考えるからダメだな」という感じで予想のつかない展開にしているんです。