前編「今からだって余裕で間に合う超魅力解説!!」はこちらから
『ストレンジャー・シングス 未知の世界』の舞台となる80年代アメリカといえば、ロナルド・レーガン大統領の在任期間であり、日米貿易摩擦やソ連との冷戦構造下で、「強いアメリカ」を徹底的に標榜していた保守的な時代…そんな認識がある。「目に見えない外敵」に対する言いようのない不安が、一見平和な市民生活の背景に忍び寄っていたのではないか。そんな中、ハリウッド映画では、『E.T.』(1982)『バック・トゥ・ザ・フューチャー』3部作(1985-90)『グーニーズ』(1985)などファミリー向け大作志向が強まる一方、『ブレードランナー』(1982)、『ターミネーター』(1985)、『ランボー』(1982)、『トップガン』(1986) などなどの大ヒット映画を量産し、また、現在でも語られるカルチャーが数多く芽吹いた時期であるともいえる。本シリーズの魅力の一つが、これら80年代カルチャーがちりばめられている点であることは否めない。果たしてそれがもたらす意味とは…?
「80年代」フックは、単なるオマージュの羅列ではない!
ではここで、『ストレンジャー・シングス』に出てくる、80年代オマージュを数えてみよう。シーズン1第1話を取り上げて、出てくる時間(分と秒)ごとに羅列してみる。
01:50
・地下室で「ダンジョンズ&ドラゴンズ」に興じる少年たち…スティーヴン・スピルバーグ監督作品『E.T.』(1982)の冒頭と同様。
03:35
貼ってあるポスターが、ジョン・カーペンター監督作『遊星からの物体X』(1982)。
04:00
・ピザ…これも『E.T.』オマージュ。ちなみに日本にピザ屋が開業した理由も『E.T.』の大ヒットにあやかっているという説がある。
04:21
・BMX(自転車)…これも『E.T.』のアイコンだ。
07:24
・家の裏手に物置小屋…これも『E.T.』冒頭を連想させるシーン。
08:19
・電球の明滅…こちらもスピルバーグ印。
08:24
・テーマ音楽とBGM…シンセサイザーを用いて自ら自作のテーマ曲を作曲したジョン・カーペンター監督作品を想起させる。
09:10
・タイトルデザイン…スティーヴン・キング作品のペーパーバックカバーのロゴを彷彿とさせる。
10:00
・ジム・ホッパー…『プレデター』(1987)で、ダッチ(アーノルド・シュワルツェネッガー)以前に森に入っていた先遣隊。プレデターの最初の犠牲者ということになる。
16:11
・【楽曲】Can't Seem To Make You Mine/ The Seeds
21:43
・【楽曲】She Has Funny Cars/Jefferson Airplane
24:16
・闇の森…「指輪物語」及び「ホビットの冒険」に登場する森。
26:50
・【楽曲】I Shall Not Care/Pearls Before Swine
25:57
・ラダガスト…「指輪物語」に登場する「茶色の賢者」。
26:02
・『ポルターガイスト』のチケット…1982年、トビー・フーパー監督。スティーヴン・スピルバーグも製作・脚本に関わる。
26:14
・ピエロが怖い…キングの小説「IT」(1986)…ではありえないので、その発想元となったジョン・ゲイシー事件のことだろう。
28:55
・【楽曲】Jenny May/Trader Horn
38:50
・【楽曲】White Rabbit / Jefferson Airplane…「不思議の国のアリス」をモチーフとした楽曲。デヴィッド・フィンチャー監督の『ゲーム』(1996)や、近年ではラナ・ウォシャウスキー監督の『マトリックス レザレクションズ』(2021)でもフィーチャーされた。
41:07
・【楽曲】TOTO/Africa
※数字はNetFlixにおける再生時間
シーズン1第1章の49分間。ざっと挙げるだけでも、これだけの「80年代カルチャー」がちりばめられている。80年代を舞台とする本シリーズにとって、コレは超重要なエレメントだ。セットや衣装などだけでなく、サウンドや空気感をも再現する試みであり、あちこちに散らばるカルチャーの散らばるカルチャーに気づいた視聴者をニヤリとさせることで「ハマ」らせることになるからだ。
・ティム・バートン監督初期作品で大注目されたウィノナ・ライダーが、まさかのシングル・マザー役で80年代が舞台の物語に!?
・こ、このシンセサイザーのBGM…ま、まさかジョン・カーペンター監督オマージュ!?
などなど、ほかにも筆者が自室でひとり狂喜乱舞したこれら「トリビア」をひとつひとつさらっていくことは、他のサイトやブログなどでもとうの昔に行われているため、敢えて割愛する。アナタには是非、本シリーズをご覧になりながら、自身で探ってみていただきたいのだ。