男一匹宝探しの北陸旅 #1
男一匹宝探しの北陸旅 #2
男一匹宝探しの北陸旅 #3
男一匹宝探しの北陸旅 #4
歴史的・文化的価値の高い灯台を、ラッキーにも独り占め
自力でカスタムしたオンボロ軽バンの車中泊専用カーで、東京の家を出発してから3日目。僕は能登半島最先端の町、狼煙(のろし)に到着した。
石川県珠洲(すず)市狼煙町……。
独特な町名の由来については諸説あるようだが、江戸時代、能登半島沖を航路としていた北前船に、ここから狼煙をあげて合図を送っていたからというのが、もっとも有力のようだ。
能登半島沖の海域は難所で、一歩間違えば船は佐渡島方面へ流され、遭難してしまったというから、当時の船乗りにとって、この町からあがる狼煙は重要な情報だったに違いない。
そんな狼煙の町からは現在も、船の安全を守るための合図が送られ続けている。
能登半島の奥地をぐるりと巡る通称“奥能登絶景街道”、県道28号沿いにある「道の駅 狼煙」に車を停めた僕は、そこから5分ほど歩いた先にあるという通称“狼煙の灯台”、禄剛埼(ろっこうさき)灯台を目指した。
その灯台について予備知識はほとんどなかったが、日本海に突き出した半島の最突端というシチュエーションから、かなりの景色が期待できるのではないかと、足を向けたのだ。
灯台へと続く階段道の前後には誰もおらず、僕一人きりだった。
禄剛埼灯台は歴史的・文化的な価値が高く、「日本の灯台50選」にも選ばれるほどの名所である。
駐車場から歩いてすぐというアクセスのしやすさもあり、観光シーズンには多くの客が訪れるという。
しかし、観光的にはオフシーズンである11月の平日という絶妙なタイミングだったため、僕はラッキーにも、その後も灯台を独り占めできたのだ。
灯台までの約300メートルの道のりは、かなり急勾配の坂で息が切れた。
でも登り切った先には、期待通りの素晴らしい絶景が待ち受けていて、疲れを忘れさせてくれた。
前日までの悪天候から回復し、広がり始めた青空をバックに屹立する白亜の灯台は、とても美しかった。