「母親のようになりたくない」
自分も母親のように、「毒親になってしまうのではないか」という恐怖があるのだろうか。
「恐怖と言うか、〝自分の人生を生きちゃいけない〟という呪いにかかっているような気がします。自分だけが楽しむ時間を作れないのです。
『私は母親だから、とりあえず今は子どもを優先にするべきで、自分のことは後回しにしなければ』って思ってしまいます」
おそらく、毒親でもなく、共依存もない母親なら、「自分の人生は自分のもの。子どもの人生は子どものもの」として、臨機応変に対応できるだろう。少なくとも、子どもが目の前にいないときまで、自分の行動を制限するのは頑なすぎる。
「両親から可愛がってもらった記憶はほとんどない」と話す一方、明るく活発な性格で、友だちが多いという時任さん自身は、取材時には自己肯定感が低いようには見えなかった。
だが、改めて振り返ってみると、「〝自分の人生を生きちゃいけない〟という呪いにかかっているような気がする」と言うように、自身に対して無意識に否定的で、「母親のようになりたくない」「子どもに自分のような思いをさせたくない」と頑張りすぎてしまっているという点で、やはり自己肯定感が低く、母親との共依存傾向にあるのではないかと思われた。
共依存から逃れるためには、誰か1人とか、何かひとつだけでなく、なるべく複数の人とつながり、いろいろな何かに興味を持つことが重要と考える。
ダーツの的を想像してほしい。
円の中心に自分がいるとしたら、そのすぐ外側には、自分を取り囲むように、両親や配偶者のような、自分にとって最も大切な人がいる。さらにその外側には、親友や祖父母、きょうだいなどがいて、そのまた外側には、友人知人……と、自分と適切な距離を保ちながら、幾重にも取り囲む形で、何人もの味方を持つことが対策となるように思う。
〝誰か1人〟とか、〝何かひとつ〟にこだわってしまうと、それを失ったときのショックが大きい。
「自分をバランス良く保つこと=毒親にならないこと」とすれば、自分の味方を増やし、バランス良く配置することが、毒親にならないための有効なヒントではないだろうか。
文/旦木瑞穂 写真/shutterstock
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