自分を撃った猟師を覚えていて逆襲したクマも

手負いの獣ほど怖い物はないとよく言ったものだが、熊においては確実に仕留める事が大切だと後藤氏は若手のハンターに指導を行っている。

「クマを撃った経験のない若手のハンターには100メートルよりも近い距離で撃つように言っています。下手に半弓(弾が命中しても致死状態になっていない状態)にしてしまうと手がつけられなくなります。

昔、厚岸町で猟師3人のうち1人がクマを撃ったのですが仕留めきれず、後日、同じ現場で、3人のうち撃った猟師だけがクマに襲われて殺されたという事例もあります。つまり、一度撃たれたクマはその人間に対して恨みを持つわけです」

ヒグマは雑食動物とされているが、実際は草食傾向が強い。ではなぜ、OSO18は牛を襲うのか。後藤氏が解説する。

「牛の飼育が増えて管理が難しくなり、牧場で放し飼いにするケースが増えたため牛を襲いやすい環境が生まれてしまったためだと思います。ただ、実は昨年にOSO18 を返り討ちにした牛がいて、その牛の角から採取された毛はOSO18だと特定されています。

もしかしたら一度やられたことで警戒してもう牛を襲わない可能性もあります。そもそもOSO18も他のクマも基本的には人間を恐れているので近寄ってきません。ですが、これまでそうだったから今後も絶対に人間を襲わないと断言することはできません」

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2019年8月13日、標茶町オソベツ地区で撮影されたOSO18と見られるクマ
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何度もクマと対峙した事がある後藤氏も、「今年こそOSO18を獲れれば」と意気込む。

「クマは威嚇する時、体を大きく広げて立ち上がるので、真正面から胸(心臓)を狙うしかない。警戒心の強いOSO18は1発、2発撃ち込んだところで死なないだろうし、そう簡単には仕留められないでしょう。獲れるかどうかは運ですね。

猟友会は20人近くの猟師が在籍していて、OSO18の有力な目撃情報が入り次第、メンバーたちで囲い込みに向かう予定です。獲れたら剥製にする予定だと町長に伝えています」

まもなく、雪解けが終わり牛が放牧される。OSO18が捕獲されない限り、牛が襲われる不安からは解放されない。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班