詩がどんなプレイも受け入れてしまう理由
一時期、詩は女性用の保護施設に入ることになったが、わずか3カ月ほどでそこを出てしまう。施設の職員や女性たちとの人間関係が苦痛だったのだという。彼女は話す。
「(施設の)女の人たちは、私のこと『バカ』っていうし、職員の人たちは『ちゃんとしなさい』『がんばりなさい』って言う。でも、どうしていいかわかんないし、なんかワーってなっちゃって、何回か肘を切ったこともあって、このままいったら死ぬんじゃないかって怖くなった。それで出た」
詩は再び風俗店へと向かう。面接に合格すると、店の寮で暮らしはじめた。
だが、その店ではなかなか客がつかなかった。そこで店長から勧められたのが「AF」と呼ばれるアナルセックスだった。それを売りにすれば、きっと客がつくはずだと教えられたのだ。すると、店長の言葉通り、1日2、3人の客がつくようになった。彼女は言う。
「おしりが好きってわけじゃない。でも、私、昔っから痛いのはぜんぜん平気なの。学校でのいじめで叩かれても、なんか頭グチャグチャになったときに手首切ったりしても、あんまり痛いって感覚がなかった。だから、たぶんAFも平気かもって思ってやってみたら、やっぱり平気だった。店長からは感覚がバカなんだって笑われたけど」
彼女は火傷すら気づかなかった過去があるというから、発達障害の症状の一つである「感覚鈍麻」があるのだろう。それが風俗での仕事をより過激なものへとさせていくのである。
彼女は次のようにも語っている。
「店長は私が何でも平気だからって、いろんな仕事を紹介してきた。5人の人と1日中セックスさせられて動画を撮られるとか。1日で20回くらいやった。でも、痛いとか、気持ち悪いとか、なんにも感じなかった。気持ちいいも一度もない。血が出てもぜんぜん平気。お客さんに言われて気づくことばっか。たぶん、なんか変なんだと思う」
この店のオーナーは、そんな詩の特性を察したのか、たびたび痛みを伴うアルバイトを紹介してきた。SMのパーティーに出席させたり、諧謔的な性癖を持つ男性を紹介したりしたらしい。無論、オーナーはマージンをもらっていたはずだ。