16歳で1回手取り2000円の格安風俗に入店

中学に入学して間もなく、詩は摂食障害になって不登校となった。3年間、ほとんど施設の中にこもる生活を続けていたそうだ。足腰の筋力が弱まり、運動することができなくなるほどだった。

中学卒業後、施設の職員に勧められ、詩は通信制高校へ入学した。その年、成人していた長女から連絡があり、久々に会うことになった。長女は言った。

「もし施設の暮らしが嫌なら、私のアパートに来てもいいよ」

長女は高校卒業後に就職したホテルをやめ、夜のクラブでキャストをしながら一人暮らしをしていた。詩は施設の生活に息苦しさを感じていたため、飛び出すように長女のアパートに転がり込んだ。

新しい暮らしは、詩にとって刺激的だった。長女が毎晩きれいに着飾って仕事に行くのを見て、「いいな」という思いが膨らんでいったという。自身も水商売の店に面接に行ったものの、すべて落とされた。年齢もさることながら、コミュニケーションに難があったようだ。

写真はイメージです 写真/Shutterstock
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そんな彼女がたどり着いたのが風俗の世界だった。街で声をかけられたスカウトマンから「風俗のほうが合ってるよ」と言われ、その気になって面接へ行ったのだ。客の支払いは1回4000円で、女性の取り分が2000円の格安風俗店だったというが、16歳の少女を働かせていることを考えれば、違法の店だったのだろう。

写真はイメージです 写真/Shutterstock
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1か月後、詩は長女に風俗で働き始めたことが知られてケンカになり、アパートを追い出されてしまう。詩は風俗店の店長に頼み、店の更衣室にバスタオルを敷いて寝泊まりさせてもらった。毎日1日2回、店の掃除をし、取り分も2000円から1000円に下がるという条件だった。

更衣室での生活は2年半に及んだが、店長が夜逃げをしたため、突如として終わりを迎える。そして、詩は寝起きする場所を失ってしまった