なぜ読売と朝日の支持率がちがうのか
マスコミの世論調査は、基本的に毎月1回、週末に電話調査で行われ、これで内閣支持率などを定点観測している。衆院選や大きな事件などが起きるとさらに緊急の世論調査が加わる。今後行われる各社の世論調査でも、政権不支持のトレンドは変わらないとの見方が大勢だ。
これまで内閣支持率が記事になるたびに、SNSなどで「なぜマスコミによってこんなに数字が違うのか」と疑問が呈されてきた。保守的な読売・産経は、政権与党への支持率が高めに出る一方で、朝日・毎日はその逆という具合だ。かつて「意図的に自民党に厳しく操作しているから信用できない」と吐き捨てる自民ベテラン議員もいた。だが、奇妙なことに最近、両者の結果は似てきている。
まずは11月の各社の世論調査を見比べたい。質問した時期によって政治の出来事が異なるため一概に比較はできないが、副大臣・政務官の辞任などで下落していた時期だ。いずれもRDD(ランダム・デジット・ダイヤリング)方式という、コンピュータが無作為に電話番号を発生させ、固定電話と携帯電話に発信する方式を採用している。
図からは保守とリベラルで区別されがちな朝日と読売のあいだに大したポイント差はないことがわかる。一方で、日経と毎日では9ポイント差もの開きがあり、一部の統計専門家からは「本当にこんなことがあり得るのか」との疑問もでている。ただ、永田町の一部では「毎日はいつも低く出すぎるが、時代を先取りしている」とおもしろがる向きもある。
また、かつて朝日・毎日の内閣支持率は他社より低く出る傾向にあったことが知られている。「反安倍だから」という嫌味にとどまらず、ネット上では数字を改ざんしているとの批判がつきものだった。だが当然のように両社の記者は否定するし、改ざんは信用を一瞬で失う行為だけに実際に行われているとは考えづらい。
ではなぜ、メディアによってこうした差が出るのか。その理由として、電話での世論調査では、はじめに「○○新聞です」などと名乗るため、そのメディアに好意的な回答者が答えるからという指摘があるが、これは多くの新聞社が公に否定している。
ポイント差が出る理由のひとつは「重ね聞き」の有無だ。読売や日経では「岸田内閣を支持するか、支持しないか」と聞いた際に、答えがどちらでもない場合、「どちらに近いか」と重ねて聞く。こうすることで、支持・不支持の割合を増やすことができる。一方で朝日や毎日は、回答がはっきりしない場合は「その他・答えない」に分類し、2回目の質問はしないため、低く出るというわけだ。
この他にも、無党派層が多い携帯電話回答の割合や、質問者が有人かどうか(毎日のみ自動音声とSMS)などで変わると指摘されている。いずれにせよ、質問方法は各社それぞれだが、継続的に同じ方法を採り続けることが大切で、上昇・下降トレンドを見ることに意味があるとされる。
各社による岸田政権の支持率が現在、一様に低いことは、もはや保守かリベラルかという垣根を越えた傾向なのだろう。