彼の色に染まりたいって本気で思っていたんです

仕事は何を?

「中堅の家電メーカーの事務職です。女性が多い職場だったので、それなりにみんなとも仲良くやっていました。同僚から時々彼氏の惚気話を聞かされて、もやっとしたりすることもありましたけど、もう他人の男には手を出さないって決めていたから、聞き流すようにしていました。そのうち気になる人が現れたんです。入社して半年ほどした頃です。10歳年上の職場の先輩で、もちろん独身で恋人もいなくて、見た目も悪くなくて仕事も出来て、この人だって思いましたね」

どんな展開に?

「私から告白しました。彼はびっくりしていましたけど、すぐにOKの返事を貰えました。付き合えることになった時は嬉しかったです。これでようやく私もまっとうな恋愛ができるって思いましたから」

それはよかった。

「23歳の私からしたら、33歳の彼は大人で、学生時代には会ったことのないタイプでした。彼の言うことは何でも説得力があって、私はまるでひな鳥が最初にみたものを親鳥と思うように、彼にはまって行きました。彼に言われることは何でも素直に聞いたし、髪型も化粧も洋服も彼好みに変えました。結婚も視野に入れていましたし、彼の色に染まりたいって本気で思っていたんです」

それも恋のなせる業だろう。

「でも2年ぐらい経った頃から……」

ああ、その後に続く話は何となく想像がつく。

「彼は仕事や、私の考え方、日々の行動などにいろいろと口を出すようになって来ました。彼はいつも『君のためを思って』と言っていて、その頃の私はまだ彼にのめり込んでいたから『彼の言うことをきいていれば間違いないんだ』って、自分に言い聞かせていました」

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別れたくて信頼する上司に相談したら、その人と付き合ってしまった

恋愛の過程で、男の論理や要求を受け入れることで満足感が得られる時期がある。好きな男に影響される、もっと言えば支配される、そのすべてが愛の表現のひとつだと信じ込む。このM的感覚はある意味、恋愛ならではのトランス状態と言っていいだろう。

しかし、それは紛れもない錯覚であり、恋に舞い上がっている間だけに通用する呪術の一種である。

目が覚めた時、みな同じことを言う。

あの時の私はどうかしていた――。

「でも、だんだん鬱陶しくなって、鬱憤がたまるように」なっていきました。ある日、買い物の帰り道、どんどん先を行く彼の背中を見ていたら気が付いたんです。この人、自分のことしか考えていない。今までのことは、典型的なモラハラだって。もしこのまま彼と結婚したら、こういう生活が一生続くのかと思ったら身震いしてしまって、ようやく別れる決心がつきました。でも不思議なもので、私が別れを決めたとたん、彼からプロポーズされたんです。彼は当然私がOKするものと思っていたようですけど、もちろんお断りしました」

すぐに別れられた?

基本的にモラハラ男は執着心が強く、こじれると嫌がらせをしたり、ストーカーに変貌する危険がある。

「揉めました。断った時の彼の怒る顔がすごく怖くて……。『ただで済むと思うなよ』って凄まれた時は、思わず『結婚します』って言いそうになってしまいました」

どう解決したの?

「信頼できる上司に相談して、間に入ってもらうことにしたんです。さすがというか、上司は彼をうまく説得してくれました。力のある上司でもあったから、これからの自分の立場も考えて、彼も退かざるを得なかったんだと思います。その後、私は部署が替わり、顔を合わせることもなくなりました」

一件落着というわけだ。

「まあ、そうなんですけど……」

まだ何か?

「実は、それがきっかけで、その上司と関係を持つようになってしまって」

ああ、そういうこと。