すべて公立でも1000万円超の現状

子どもにお金がかかるというと、しばしば「公立に行かせればいいはず」と言われます。しかし現実はそう単純ではありません。まず、高校卒業までの費用を見てみると幼稚園から高校までの15年間、すべて公立に通わせても1人あたり平均総額574万円です。この金額は文部科学省が行っている調査によるものですが、近年上がり続けており、直近の令和3年度のデータでは3年前と比べて30万円以上高くなってしまいました。

ここには学校の授業料や入学金、学用品費、修学旅行の積立金、塾や習い事の月謝などが含まれていますが、教育費に絞ったデータなので、食費や日用品などの生活費とは別です。子育てをするには、日常生活費以外に教育費として数百万円規模のお金を支払っていく必要があるということです。

幼稚園から高校まですべて公立でも1000万円超の現実…少子化なのに親の負担が重い国、日本で子どもはぜいたく品なのか?_2
幼稚園~高校:文部科学省「令和3年度 子供の学習費調査」、大学:日本政策金融公庫「令和3年度 教育費負担の実態調査結果」をもとに図版は筆者作成

家庭の教育方針や地域性、子どもの希望などによっては、私立に進学することもありえます。高校で私立に進学すれば幼稚園から15年間でかかる総額は736万円、幼稚園からずっと私立に行けばなんと1人あたり1838万円にもなります。

これは子どもが高校を卒業する18歳までの費用ですが、その後に専門学校や大学に進学するのであれば、まだ出費の折り返し地点にすぎません。大学の場合はたった4年間で、それまでの18年分に匹敵する出費が待っています。大学や学部による差はありますが、授業料などの入学費用と4年間の在学費用を合わせた総額は国公立大学でも481万円、私立大学文系なら690万円、私立理系なら822万円にもなります(日本政策金融公庫「令和3年度 教育費負担の実態調査結果」)。

つまり、大学進学を前提とした場合、幼稚園から大学までずっと公立・国立に通ったとしても、年間の総額にすると子ども1人に1000万円以上は必要ということです。途中で私立に進めば1500万円を超えるでしょう。子どもが2人、3人となれば数千万円という途方もない額になります。標準的な進路を選んだとしても、子どもを1人育てるだけで住宅や高級車に匹敵する金額がかかるのです。