今なお語り継がれる「ウッドストック・フェスティヴァル」

こうした反戦ソングやチャリティーイベントは、これまでもポップスやロック史と歩みを共にしてきた。

なかでもロック・シーン最大の平和イベントが、今から約50年前の1969年8月に愛と平和をテーマに開催され、ベトナム反戦に影響を与えた「ウッドストック・フェスティヴァル」である。

ニューヨーク州サリバン郡の農場で行われ、若者やヒッピーら約40万人が集結。出演者にはジミ・ヘンドリックスやジャニス・ジョプリン、ジェファーソン・エアプレイン、クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤングなど錚々たる顔ぶれが並び、60年代米国のカウンターカルチャーを象徴するイベントとなった。

その模様は、『ウッドストック/愛と平和と音楽の三日間』というドキュメンタリー映画として公開されている。

対して、世界で最初の大規模チャリティーイベントとされるのが、1971年にニューヨーク ・マディソン・スクエア・ガーデンで開催された「バングラデシュ・コンサート 」だ。タイトル通り、バングラデシュの人道的危機に対するチャリティーで、元ビートルズのジョージ・ハリスンが提唱。ボブ・ディラン、エリック・クラプトン、リンゴ・スター、レオン・ラッセルなどが出演し、ライヴ・アルバムや映像作品も作られた。

20世紀最大のチャリティー・コンサート「ライヴ・エイド」

そして20世紀最大のチャリティーコンサートとされるのが、クイーンの伝記映画『ボヘミアン・ラプソディ』でもフィーチャーされたことで記憶に新しい、アフリカ難民救済を目的とした「ライヴ・エイド」である。これは1985年7月13日、ロンドンのウェンブリー・スタジアムと米フィラデルフィアのJFKスタジアムで同時開催され、当時のトップ・スターがズラリ勢揃い。

クイーンの他にもレッド・ツェッペリンの再結成、ポール・マッカートニーの出演、フィル・コリンズがコンコルドで大西洋を越え、英米双方のスタジアムで演奏するなど、大きな注目を浴び、20世紀最大のチャリティー・コンサートになった。

ちなみにこの「ライヴ・エイド」の伏線になっているのが、エチオピアで起こった飢餓を受け、イギリスとアイルランドの著名アーティストが集まったチャリティー・ユニット「バンド・エイド」(1984年)と、その米国版となる「USAフォー・アフリカ」(1985年)だ。

特に後者は、名だたる大物プロデューサーであるクインシー・ジョーンズ指揮の下、マイケル・ジャクソン、ライオネル・リッチー、スティーヴィー・ワンダー、ダイアナ・ロス、レイ・チャールズ、ボブ・ディラン、ビリー・ジョエルら、45名の大スターが集結し、楽曲『ウィー・アー・ザ・ワールド』が完成。

そのレコーディングの模様がドキュメンタリーとして映像作品化され、シングル、アルバム、ビデオの合計収益は6300万ドルともいわれ、その印税分がチャリティーとして寄付された。