SNSで話題となった、コミックエッセイ『夫と心が通わない カサンドラ症候群で笑えなくなった私が離婚するまでの話』。アスペルガー症候群の夫と暮らす妻が、夫との情緒的交流の難しさからストレスを抱え、自己評価の低下やパニック障害、抑うつ、無気力などの症状を発症する「カサンドラ症候群」に陥り、最終的には離婚してしまうストーリーだ。
SNSで話題になった作品を書籍化、さらに世に広めるきっかけを作った書籍の担当編集者に話を聞いた。
カサンドラ症候群を経験したからこその思い
――書籍化の打診をしたタイミングではSNSで完結していたのでしょうか?
していないですね。半分ぐらいまで描かれていた時期にお声がけしました。そこから約1年後に完結しています。
――では、結末部分に関しては鳥頭さんとすり合わせを行って?
そうですね。書籍にするなら結末を知っておく必要性があったので、プロットに起こしてもらいました。
原案者のアゴ山さんは、このカサンドラ症候群がきっかけで離婚されています。シングルマザーとして、お二人の子育てをされながら今回の書籍化に取り組んでくださったので、鳥頭さんもアゴ山さんもお忙しい中で、時間をかけてていねいに描き下ろしていただいたということはぜひ知ってもらえると嬉しいです。
――書籍化の反響はありましたか?
まだ存在を知らなかった人に、カサンドラ症候群という言葉を届けることができたのはよかったなと思います。
発売してからも熱心な読者からの共感の声が多くて。SNSにも反応がたくさんあったのですが、一番印象的だったのは、書籍限定で専門のカウンセラーの先生に登場していただいたシーンへの反響ですね。
――プロの客観的な意見が併記されているのですね。
カサンドラ症候群って正式な医学名ではないので、SNSの心ないコメントには「カサンドラ症候群という言葉に逃げているんじゃないか」というものが多いんです。
そこを専門のカウンセラーが「思い当たる言動がパートナーにあって、それで本人が苦しんでいるなら、そう呼んでいいんですよ」って明言してくださったことに救われている方が多い印象がありました。
監修していただいた真行結子先生自身もカサンドラ症候群を体験された方だったので漫画にも共感されていて。「少しでも救われる人を増やせてよかったです」とおっしゃっていました。
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