デジタルネイティブ世代ではない人が
マッチングアプリに手をだす恐怖

わざわざ彼氏を作るのは面倒くさいし、ひとりが気楽でいいと思っている46歳の清美さん。漫画の中では高校時代の先輩から「枯れてるなあ」と衝撃の一言を浴び、さらに婦人科で女性ホルモンが少なくなっていることを告げられ、「女じゃなくなるときがきたんだ」と焦りを感じてしまう……。

一方で、世の中には年齢も出産適齢期も関係なく、誰かにときめき続け、恋愛し続ける人がいるのも確か。野原広子作品『さいごの恋』の主人公・清美さんの場合は…? 

担当編集者の今野加寿子氏に聞いた。

──最新作、『さいごの恋』のテーマはどのように決まったのでしょう?

若者だけが恋愛をしているわけではなく、中高年やもっと上の世代でも、不倫を含め、恋に忙しい人が意外に多いというようなことを、野原さんと話したりしていました。昼の時間帯のラブホテルは、中高年の男女で賑わっているとも聞きますし。

彼らが出会うきっかけのひとつとして、最近はマッチングアプリが挙げられます。若い人たちのものだと思っていましたが、50代、60代の人たちが実際にデートをしたり、恋愛関係になっているそうで……。もちろん個体差がありますが、肉体関係を含めていつまでも恋をしていたい人はいるんですよね。

──とはいえ、清美さんはまったく逆のタイプ。「動物でいうなら群を作れない性質だと思う」とすら発言しています。

清美さんのように恋愛方面では一見枯れているように見える人だって、誰かと関わり合いたいという気持ちはどこかにあるのではないでしょうか。肉体関係をともなわなくても、誰かのことを愛し、愛されたいという気持ちはあるのではないかと。恋愛に興味のなかった清美さんが、今後どう変わっていくのかに注目していただきたたいです。

──漫画の中にはマッサージシーンが多いですね。

子育てに忙しい40代女性は、夕方からマッサージに行く時間はありません。清美さんがマッサージに行けるのは、独身の特権。時間を自分の管理下で使える象徴的なシーンと言えるかもしれません。友人や同僚ではなく、マッサージ師との会話が、地味に清美さんの心に地味に響いたりもします。やや距離がある関係性というのがいいのかもしれませんね。

──大人の恋の出会いかたとして、マッチングアプリをどう描くのかに期待感があります。

清美さんのような真面目な人は詐欺にあっちゃうんじゃないかとか、逆にストーカーになられたときにどうするのかとか、気になりますよね。特にデジタルネイティヴではない世代にとっては「怖い」という思いもあるのではと。そのあたりを野原さんがどう切り込まれるのか私も楽しみにしているんです。

──ということは、清美さんにも試練が訪れるのでしょうか?

今後どう展開するかは読んでからのお楽しみに……となってしまいますが(笑)、順風満帆に進むわけではないということだけお伝えします

漫画に描かれるのは、あくまでも「清美さんのケース」です。たまに食事をする相手と出会えれば十分という人もいれば、ネットの中の交流だけで完結している人もいるし、常時、誰かと出会っていたいという人もいると思います。誰しもに当てはまる内容だとは思いませんが、勇気を出して登録した清美さんの今後に期待してください。

取材・文/松山梢


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