芸能人の結婚会見と山口智子主演ドラマに見る結婚観の変化

――90年代の音楽シーンでいうと、小室ファミリーと家父長制というテーマもありました。

擬似ファミリー的な集団を率いた音楽プロデューサーというと、海外では60年代に音楽レーベル「モータウン」を運営していたベリー・ゴーディや、そのまま「フィル・スペクター・ファミリー」とも呼ばれたフィル・スペクターがいますが、小室哲哉も自らプロデュースする歌手たちと「小室ファミリー」を形成しました。小室哲哉を頂点としたファミリーの中で、その時々で小室の恋人であった女性が“プリンセス”として扱われる。そういうゴシップ的な視線を含めて、世間は楽しんでエンターテイメントを消費していた時代だったんです。

90年代を席捲した小室ファミリーを築いた小室哲哉氏(1996年の記者会見) 写真:Los Angeles Times/Getty Images
90年代を席捲した小室ファミリーを築いた小室哲哉氏(1996年の記者会見) 写真:Los Angeles Times/Getty Images

――トピックスごとに扱っている事象は違うのに、本を読み進めていくと、ジャンルや年代を超えて、テーマや問題がつながったりもしますよね。

それは全体を通じて意識した裏テーマですね。第1章は、目次としては「ピッカピカのニュージェネレーション 1980年代」となっていて、1980年代の出来事を取り上げています。たとえば、1985年に起きたJALの123便の墜落事故について。この事故では、捜索隊より先にテレビクルーのペリコプターが現場に到着して、その様子を生放送で伝えたという、テレビ史的にも重大な出来事でした。ほかにも、小学館の『小学一年生』のテレビCM「ピッカピカの1年生」シリーズがフィルムではなくビデオで撮影されていたとか、ファミリーコンピュータのブームとか。

要は、第1章というのは、個別には重大事件やゲームや芸能の話をしていますが、全体を通して読むと、テレビ論になっているんです。いかにテレビが現実を追い越していったのか、というのが裏テーマ。ちなみに、第2章は90年代をモチーフにしていますが、裏テーマは通信の歴史になっています。

テーマがつながるということで言えば、第1章では80年代には芸能人の結婚会見が生中継されていたことについて書きましたが、第2章では「山口智子の主演ドラマに見る90年代女性の働き方」というパートがあって、結婚観の変化も見てとれる。
山口智子が主演のドラマは、常に時代の転機になっていて、結婚観や子育て観についても更新して、主体性をある女性を体現する役を演じていました。こういういろんな接続を楽しんでもらえたらいいなと。

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取材・文/おぐらりゅうじ