やり残したことや、心残りがまったくない

――この本をたくさん売らないといけないですね。

そうそう。最低でも1万部はクリアしなきゃダメだよね。

――書籍では対談相手に「自分が余命半年と告げられたら」という質問を投げかけていましたが、印象に残っている回答はありましたか。

でも、やっぱり何もしないって人が多いよね。今やってることをやり続けるかとか、今やってることを整理して片付けるとか。切り替えて新しく何かをするって人はいなかった。それでいうと、豊島(圭介)監督の「死に対して興味ないでしょ」っていう指摘が面白かったな。俺、本当にないわと思って。

末期がんの叶井俊太郎が一番自慢できる仕事は『アメリ』でも『ムカデ人間』でもなく、あの映画を公開したこと_2

――死後の世界とか考えたことがなかった?

全然なかったね。豊島さんがいまやっている『三茶のポルターガイスト2』が来年3月公開だから、それまでに死んで映画に出られたらいいなっていう気はしてる。コックリさんとかで呼び込んでくれたら面白いよね。

今年公開された『三茶のポルターガイスト』 ©2023/REMOW
今年公開された『三茶のポルターガイスト』 ©2023/REMOW

――もしも天国と地獄があるとしたら、自分はどっちに行くと思いますか?

地獄だろうね(笑)。俺に光に包まれながら草原を走ってるイメージはないから、針にグサっと刺さって、ギタギタの血まみれになってると思う。なんなら、「これが地獄か〜」って、見てみたいくらいの気持ちがありますよ。

――本当にやり残したことや、心残りがないんですね。

まったくないですよ。本当にいままで1日1日が充実してたんだなって思います。

――何かと縮こまりがちな世の中ですから、叶井さんのような奔放な生き方に憧れる人もいると思うんですよ。

本当ですか? まあ仕事もプライベートも含めて、好き勝手やってきたからね。そういう意味でも、まったく後悔がない。

――何でそういう生き方でやってこれたんだと思いますか?

考えたこともなかったけど、我慢しなかったんだろうね。相手のことをまったく気遣ってなかったし、いつも自分優先みたいなところがあったんじゃないかな。それがいけないんだろうね。だから、やっぱり地獄行きだな(笑)。

――ただ、そういう生き方をしてきたから、スパっといいエンドロールが迎えられるわけですもんね。

そうね。結局、そこが未練のないところに繋がってくんだろうね。だから、仮に30代で末期がんと言われても、いまと同じ気持ちだったと思う。