「これ買いませんか?」「あれ買いませんか?」
積極的な営業の試練に…
世界最高峰の時計ブランドとの付き合いが始まった。付き合いが始まると、早速ロレックスとの違いを感じることになった。
「こちらに記入お願いします」
差し出された紙には勤め先や役職などの個人情報の記入欄があった。
こ……これは……。
「こちらを本社へ提出します」
そ……そんなことをするのか……。動揺しつつも、まぁ自分の法人はあったし、自信満々で代表取締役と書いてやった。結果本社にどう思われたのかはさっぱりわからないけど……。
あととにかくいろんな時計を紹介(営業)される。「これ買いませんか?」「あれ買いませんか?」などなど。
ロレックスの場合、当時は今現在に比べればはるかに店頭在庫はあったけども、あまり積極的な営業や商品提案をされることは、少なくとも僕はなかった。
さらにそういう連絡もLINEで送られてくる。ロレックスの店員さんとLINEなんて交換したこともない。何もかもが違う。とにかく営業が多い。
なんにせよ提案されたら素直に見に行く。そこをむげに断るほどの度胸もない。仕事の合間を縫ってなんとか店へ通う。
いや、忙しいんですよ本当に。もちろんなんでもかんでも買うわけにはいかないし(金銭的に)、欲しいと思わなければ買わない主義だ。
そういった提案をされた時計を見にきて、僕が買うかどうか悩みつつも、そこまでピンと来ず、気持ち的には買わなそうな感じに傾いていると、目の前にいる店員さんは、徐々に熱意を失い、気だるそうにスマホをいじり出したりする。
「買わないならもういいよお前」といった雰囲気。
こ……これは……なんというか。
「俺…もしかして、試されてる?」