求めても何も得られなかった私の手元に残った宝物

――「詰んだ」状態を抜け出せたのはどんなときだったのでしょう。

あくまで「(仮)」の答えなんですけど――「なんでもない日常が幸せである」というのに、気づいたときかもしれません。

この作品でいうと、何歳までに結婚して、収入はこれぐらいほしくて、人にこう見られたいと思ってた自分は、何も得られませんでした。お金も残高が10万円以下になり、仕事も恋愛も上手くいかず、思い描いていた人生から外れた時、最後に残ったのが、友人や家族でした。

彼らが、私にとっての一番の宝物だったんです。読者の方やこのインタビュー記事を読んでくださる方にも、きっとそういう人がいるのではないかと思います。

#2へつづく

#2 「私の過去は一生、成仏しない。元アイドルという業を背負って書き続ける」人生に詰んだ過去から立ち上がった大木亜希子の作家道

56歳の“赤の他人のおっさん”と同じ家で暮らした記録を私小説にした大木亜希子が本当に伝えたかったこと。「アラサー女子を救済するコンテンツを書きたかった」_4
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取材・文/川辺美希 撮影/Keiko Hamada

映画『人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした』
2023年11月3日全国ロードショー
深川麻衣 松浦りょう 柳ゆり菜 猪塚健太/井浦新
原作:大木亜希子「人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした」(祥伝社刊)
主題歌:ねぐせ。「サンデイモーニング」  音楽:Babi 脚本:坪田文 監督:穐山茉由
@映画「つんドル」製作委員会

56歳の“赤の他人のおっさん”と同じ家で暮らした記録を私小説にした大木亜希子が本当に伝えたかったこと。「アラサー女子を救済するコンテンツを書きたかった」_5